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書評:小島宏の気になる1冊その998

永堀宏美著「保護者トラブルを生まない学校経営を"保護者の目線"で考えました」(教育開発研究所 本体:2000円)


 本書の内容の概要は,少し長いそして珍しい「書名」が明解に伝えている。今をさかのぼること23年,K出版が「売れる」と確信のない本でも出版してくれる時代,中島(なかしま)さんのお世話で,初めて拙著「学校をひらく」を単著として世に問うことができた。徐々に注目され,3版までいった。この本に対して,有名な月刊Sで「中身はいいが,裁量権を持っている校長の書いた本であることが不満,保護者・市民側の著作でないのが残念」と評された。

 本書は,保護者トラブルの防止・対応を学校(校長)の立場からでなく,要望や批判を寄せる保護者の立場から考えたらとどんなものかと筆者の広く豊かな経験を踏まえて具体的に提言している画期的な1冊である。「困った保護者」ではなく,「困っている保護者」であると視点を転換して,その困っていることに意を用いたらどうかと提案してきたが,著者(二女の母,元教育委員長,コミュニケーション研修講師など)の意図もそのような所にあると読み終えて充実した気持ちになった。

 校長,副校長・教頭の立場にある友人に「ぜひ!」と薦めるつもりである。

第1章「基礎編:保護者理解とコミュニケーションアップの土台づくり」(第1節・学校と保護者の間にある心の壁―なぜ分かりあえないか,第2節・保護者の本音,第3節・トラブル予防のマネジメントー「保護者とともに」を具体化する,第4節・保護者の心をつかむ情報発信のコツ,第5節・保護者の心をつかむコミュニケーションのコツ)。
第2章「実践編:"保護者目線"で考える行事別改善のポイント」(第1節・新年度のスタート時,第2節・新年度開始後の情報発信,第3節・保護者とのコミュニケーションの場づくり,第4節・保護者との直接対話による関係づくり,第5節・学校における保護者の疑問に応える,第6節・年度末行事で保護者の共有姿勢を育む)。