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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その177
東野 圭吾 著 「虚像の道化師」文春文庫(文藝春秋本体:700円)
夕食時に孫と地動説と天動説の話をしていた。孫たちは,地動説を発見したのはガリレオ・ガリレイであると,ゲームで仕入れた知識を得意げに話していた。もっと前に,ニコラス・コペルニクスという人が発見したんだというと,「じーじは,昔の人間だから,その話は古いよ。新しい話では,絶対ガリレオだよ」と,言い張られた。(本当は,クラウディオス・プトレマイオスの天動説と,コペルニクスの地動説が論争していて決着がつかなかったが,16世紀になってガリレオが天体観測のデータを使って地動説を証明したということらしい)
前置きが長くなった。書店で,「テレビとは違うガリレオの世界をお楽しみください」と帯のついた本書を見て,てっきり地動説のガリレオの本だともって買い求めた。開いてびっくり,ガリレオとも地動説とも全く関係なかった。
しかし,推理小説としては大変に面白く,通勤電車の中で,勤務先の昼食時,帰宅してからの夕食後にのめりこんで475頁を3日で読破した。
解決の手がかりの検討が全くない事件が,草薙刑事と友人の物理学者湯川との,結末近くなって「え,そうだったのか!」「よくもまぁ,そんなことに気付いたものだ」という仕掛けに驚いた。久しぶりに,推理小説の醍醐味に触れた思いである。種明かしはご法度,意味深のタイトルだけ紹介する。
第1章:幻惑す・まどわす,第2章:透視す・みとおす,第3章:心聴る・きこえる,第4章:曲球る・まがる,第5章:念波る・おくる,第6章:偽装う・よそおう,第7章:演技る・えんじる