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書評:小島宏の気になる1冊その232

片桐重男 編著「算数戸数学の一貫した指導が学力を向上させる」(学事出版本体:2000円)

算数・数学の学習を苦手としている子ども,算数・数学の指導に不安を感じている教師は少なくない。算数・数学の学習を苦手な子どもにしたのは,苦手を乗り越えられないこどもに効果的に支援できないのは,厳しい言い方をすれば,その大半の責任は教師側にあると言わざるを得ない。

小学校の教師は,中学校の数学の内容と指導にほとんど関心を持っていない。一方,中学校の教師は,小学校算数の内容と指導に無頓着である。その結果,小学区の教師は,小学校で概ねできていた子どもが,中学校の数学になって,思うように育っていないと,内心不信感を抱いている。中学校の教師は,子ども達が基本的なことが身に付いていないまま進学してくるので,数学の学習に支障きたしていると嘆いている。

では,いったい,このような状況を改善して,子ども達に,算数・数学の学力を高めるにはどのようにしたらよいか?

このことに,理論的,実践的に答えてくれるのが本書である。数学教育,とりわけ「数学的な考え方とその育成」に関する第一人者で,私が秘かに尊敬している片桐重男先生,そして片桐先生の薫陶よろしきを得て実践活動を続けている廣田敬一,茂呂美恵子,高山保子,鎌須賀幹子など各先生方の具体的展開例は,そのまま実践しても,自分流にアレンジしても,改善して一工夫加えても活用できる優れものである。「アクティブ・ラーニング」という言葉こそ使っていないが,既にそれを消化(昇華)しているとみている。

指導主事の先生,研究主任の先生,これから算数・数学教育を勉強したいと思っている先生,若手の先生,自分の指導を振り返る時期に来ているベテランの先生に勧めたい1冊である。

内容は,
第1章:算数・数学の一貫性を考える必要性とその内容(2節)
第2章:数学的な考え方について(1数学的な態度,2数学の方法に関係した数学的な考え方,3数学の内容に関係した数学的な考え方などについて28節)
第3章:算数の既習を生かした数学の指導(小学校4事例,中学校4事例)
第4章:算数・数学の重複しがちな内容を考慮した指導(小学校2事例,中学校2事例)
第5章:算数・数学で異なる扱いをしている内容の指導(小学校2事例,中学校2事例)
第6章:算数・数学それぞれの扱いを明確にした指導(小学校2事例,中学校2事例)
第7章:数学的な考え方を育てる指導(小学校5事例,中学校8事例)
で,構成されている。