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書評:小島宏の気になる1冊その233

能町 みね子 著 「言葉尻とらえ隊」(文春文庫本体:540円)

「あの~,最近びっくりした体験だったりありますか?」と尋ねたり,「お味はいかがですか?」と聞かれて,「わぁー,鯖のうまみが凝縮してたりしてますね」と応えるなどという会話を耳にする。

「最近,びっくりした経験がありますか」と尋ねるべきだし,「味はいかがですか」と聞かれたら,「新鮮なだけあって,甘みがあって,鯖独特の匂いもなくておいしいです」などと応えるべきではないか,と,ついいちゃもんをつけたくなる。年齢かなと思いつつ,すっきりしない。そこに,本書が出版され,感激している。私のは単なるいちゃもんか,思考停止の頭で昔の尺度で言っているだけであるが,本書の「言葉尻」には,教養とセンスが溢れていて脱帽する。


ただし,「考えさせられるp44」という部分の言葉尻には,思わず,クリティカル・リーディングをしてしまった。何かについて感想を聞かれて「考えさせられる」という反応は,何の結論も得られなかった,どう考えを巡らせたのか言語化するほどの頭脳はありませんと言うことだと断じている。でも,「こんな酷いことがあってよいものかといろいろ考えさせられ,何とかしなくてはいけないな」と,いうことで,○か×というように単純に反応できないということもあると,秘かに反発し,言葉尻を捉えてしまいました。自分流に解釈して読むと一層面白い。

スポーツ選手のインタビュー,事件の容疑者の弁明,インターネットの書き込み等々で,気になった言葉に,著者特有の分析,言い回しで,言葉尻を捉えている「おもしろ本」である。詳しくは,これから読む人の邪魔をしたくないのであえて触れない。

「仲良し」「むしゃくしゃ」「オシャンティー」「下腹部」「難しくてよく分かりません」ということになる。)」「すっぴん披露」「妊娠はしていない」「激太り」「メダル予報」「元現役東大生タレント」「丸顔の一般女性」「いい男性を見つけて」「サラリーマン川柳」「お騒がせ炎上事件ベストテン,いやワースト?」など,
なんと116の言葉尻を捉えている。