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書評:小島宏の気になる1冊その270(2)
ウォルター・ミシェル著柴田裕之訳「The Marshmallow Test MasteringSelf‐Controlマシュマロ・テスト 成功する子・しない子」(早川書房本体:1900円)
マシュマロ・テスト(ネタばらしになるので,このテストの内容にはあえて触れない。)は,「次の段階の価値を理解し,今の欲望を自制できるか?」という行動科学の有名なテストである。
今の小さな欲望に手を出すか,それとも暫く我慢してもっと大きなものを手に入れるかは,その後の人生・生き方にかかわる問題である。前者であるか,後者であるかは,先天性なのか,それとも後天性なのか。研究者である筆者は,その後の学習で後者を獲得できるようになると結論付けている。「ではどのように?」ということになるが,それも本書を読み込んで理解し,自分自身のこれからの生き方に,子どもの教育に生かしてほしい。
ヒントらしきことをいくつか挙げてみると,情報収集力,判断力,決断力,実行力,自制心,先見性,未来展望,損得勘定,できるという自己可能性,自己評価,生き方・人生観などと関係していそうだ。
でも,昔の農民は,不作の時に,種もみには決して手を出さず,野山の草木を食べて飢えをしのぎ,次の年の豊作にかけて生きてきたものである。いやいや,イネの栽培を始めた縄文後期頃から,収穫の全部を食べ尽くすことなく,一部を来年の種もみとして保存していたのである。農民はすごい。
第1部先延ばしにする能力―自制を可能にする(自制のおおもと,怠け者のキリギリスと働き者のアリなど7章)
第2部保育園時代のマシュマロから老後の資金まで(賢い人が愚かなふるまいをするとき,イフ・ゼン(もし~したら,そのときには~)に見られる人格の表出パターンなど10章)第3部研究室から実生活へ(マシュマロと公共政策など3章)