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教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その280
詩・谷川俊太郎写真・田淵昭三「今日までそして明日から」(佼成出版社本体:1500円)
本書を手にして,昔一応乙女,今確実に太目老妻のことを頭に浮かべた。
大昔,胸は食べ頃の果物のように張があり,肌もきれい,目はパッチリ,唇からは至福の笑みがこぼれている。
そして,少し前,人生経験は豊かで,味のある会話ができるようになった半面,体のどの部分もゆとりができ,全体的にふっくらとしてきた。
現在は,自分なりの人生を謳歌するとともに,子や孫に生き方を語り,時には諭し,結構幸せ感を滲み出している。髪の白さや顔の凹凸はむしろ勲章であり,美しさでありさえする。
本書は,写真家田淵章三氏の撮影した熟年時代の女性(50代だそうだ)の顔写真と,詩人の谷川俊太郎氏の詩集を組み合わせたものである。どの写真の顔も素晴らしい自己主張をしているし,特徴があるし,詩がそれを見事に謳い上げている。
この写真集のどれかの顔に,いずれかの詩に,現在のそばにいる女性,思い出の女性を見つけることができるに違いない。可能なら,そばにいる女性を撮影し,自作の詩を添えて贈ってみたらいかがですか。