ホーム > 教育研究所 > 気になる1冊 > 書評:小島宏の気になる1冊その443
教育研究所
書評:小島宏の気になる1冊その443
梶浦真著「小学校・中学校Ⅱ アクティブ・ラーニングの基礎知識―子どもの能力を育てる脳動的な授業づくり―」 (教育報道出版社 本体:907円)
本書は,「アクティブ・ラーニングの基礎知識Ⅰ」(教育報道出版社)の実践編として著したものである。
著者は,これからは,「他者との協働的な問題解決力が必要だ」,加えて新たな問題を解決するために「既習事項を組み合わせたりかけ合わせたりして,新たな智慧を生み出していく知的創造力も必要だ」と言う。さらには,社会科や数学科等の教科ごとに整理された机上問題を解決する力を超えて,「合科的,総合的な領域に関わる総合的・横断的課題(問題)に対して向き合い解決していく能力」の基礎を育てていく必要があると言う。
その1つの切り口がALにあるという考えで,ALによる小・中学校の授業づくりについて,提案している。
著者は,「子供たちに育てようとする資質・能力は多様かつ複雑であること,それらの能力を育成する学習資源や学習過程は単純化できないがゆえに,形式的かつ単純な指導方法に集約することは困難である」「ALの実践は,学習目標・内容,学習課題,学習活動,学習形態等,複数の視点から構想する必要がある」「ALの充実は,方法探しの中にあるのではなく,子どもの学ぶ姿の中にある」は,至言である。
本書は,以下のような構成になっており,学習指導要領の改訂を間近かに控え,校長・教頭,ミドルリーダー,授業づくりに関心のある教師に,多くの示唆の得られる1冊である。
第1章:「学ぶ力の充実を目指す能動的な学び」(未曾有の困難社会に立ち向かう能力を育てる,厳しい環境を生き抜く力としての学力,授業のAL化とはどのような授業づくりを目指すのか,100年前の指導案に見るAL型授業の構想と実践,確かな学力を超えたしたたかな学力,実社会を生きる上で必要な自分と社会をつなぐ能力,AL時代に求められる教師像と資質・能力など42節)
第2章「:主体的・協働的な学びを目指す授業づくり」(実社会に見る多様な学び,子どもの捉え方で授業は変わる,知識獲得型の学習観と社会参加型の学習観,他者と協働できる資質・能力は新時代の学力である,アクティブ・ラーニングと特別支援教育,ALの要素を含んでいる特別支援の授業,アクティブ・ラーニングを妨げる「なぜなぜ発問」,低学年の習得的内容でもAL化は可能だ,ALへの挑戦は子供と教師の双方向の成長・熟達に働きかけるなど38節)