1.学校ビオトープってなあに?





国内の学校ビオトープ


 近年、ビオトープという考え方が、街づくり、農林業、学校教育などさまざまな分野で大変重視されるようになってきている。

 ビオトープ(BIOTOPE)とは、「地域の野生の生きものの生息空間」を意味する。私たちの周りには、雑木林、池沼、河川、干潟など、野生の生きものがくらすさまざまなタイプのビオトープが存在する。
 そうした中で、近年自然が著しく悪化、減少している都市域や農村などでは、その現状を捉え、ビオトープを守り育てていこうとする動きが始まっている。学校教育の中でも、環境教育の重要性が高まるなかで、環境教育の教材として、学校敷地内に地域の野生の生きものの生息空間をつくり育てていく「学校ビオトープ」が注目を浴びている。

 学校ビオトープは、本来のビオトープとは多少異なり、限られた敷地の中につくることが多いため、「地域のビオトープの見本園」という言い方が妥当だろう。しかし見本園といっても、生息条件さえ整えば、さまざまな生きものが学校敷地内に訪れる。春には茂みの中で野鳥が子育てをし、夏にはカブトムシが樹液を吸いに樹林に訪れるだろう。秋には赤トンボの大群が舞い、冬にはテントウムシなどの昆虫が冬越しをしている姿を見ることができるかもしれない。
 学校ビオトープでくらす野生の生きものは、人間に世話をしてもらう中で生きているのではなく、学校ビオトープでくらす他の野生の生きものと関わりをもつことで生きている。 こうしたドラマに、日々子どもたちが触れることこそ、地域の自然をより身近に理解し、自然を大切にする心と責任感を身につける第一歩となるだろう。

 

←写真左 学校ビオトープの中で観察する子どもたち

 


 ドイツでは、学校ビオトープのことを「野外の実験室」と呼ぶ。ここで大切なことは、学校ビオトープに関わる中心は、子どもたちでなくてはならないということである。計画段階からできるだけ関わり、地域の野生の生きもののために、試行錯誤を繰り返しながら池や樹林などをつくり育てていく。こうした活動をとおし、子どもたちは、自然観察をするだけでは得られない、さまざまな気づきや疑問、そして親しみをもつようになる。






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