■伝統から最先端へ■
── 村田製作所の設立の経緯について聞かせてください。
関口晴巳さん (以下,関口) 「じつは,最近,創業者の村田昭が他界したこともあり,当社の生い立ちについてあらためて話をする機会が多くなっています。創業者の父は,京都市の東山で清水焼をつくっていました。窯業の家に生まれた創業者は,事業の拡大を父に進言したところ,父から『人と同じことをやるな』と言われたそうです。清水焼の業界で拡大を図っても,同業者との摩擦が生じ,過当競争になるだけというのが,その理由だったようです。
そこで,創業者は,父の言葉を受けて,村田製作所を興して陶磁器の新しい可能性を模索し始めました。初めはセラミック部品を島津製作所などに納入していたそうです。1947年には,京都大学の電気教室との産学共同によって,チタン酸バリウムを使ったコンデンサの開発に初めて成功し,その後も独自製品を開発してきました。1992年より現社長の村田泰隆が引き継ぎました。」
── 1995年に会社として「環境憲章」を掲げるなど,環境にも配慮しているようですが,最近はどのような取り組みがありますか。
関口「2004年度に新本社ビルを建設した際,建築廃棄物のゼロエミッション(★2)を達成しました。これは,関西地区では先進的な取り組みとして評価されています。また,コジェネレーションシステム(★3)を導入して省エネルギー化を推進するなど,CO2
の削減にも貢献しています。ヨーロッパの RoHS 指令(★4)に対応するために,有害物質を使わない製品づくりも進めています。物質を切り替えるとコストアップになる場合もありますが,何とか全体のコストを抑えています。さらに,当社では,製品の開発設計段階から環境に与える影響を査定し,一定の基準を満たさなければ製品化・量
産化できない評価制度を導入しています。」
(★2)ゼロエミッション:異業種間が共同して100%リサイクルし,廃棄物を出さない取り組み。
(★3)コジェネレーションシステム:発電時の排熱利用など,一つのエネルギー源から複数のエネルギーを取り出す仕組み。
(★4)RoHS指令:Restriction on Hazardous Substances(特定物質使用禁止指令)の略。鉛,水銀,カドミウム,六価クロム,PBB(ポリ臭化ビフェニール),PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)の6物質の使用を禁止する規制で,ヨーロッパで2006年7月以降に施行される予定。
── さすが環境との共生を重視している会社だけあって,いろいろな取り組みをされているんですね。リサイクルとか,製品の環境負荷を軽減する取り組みは何かありますか。
関口「環境負荷の軽減に関しては,製品の小型化・省電力という面
からアプローチしています。電子部品は機器に組み込まれてからの跡をたどるのが非常に難しく,リサイクルは電子部品メーカーだけでは取り組みに限界があります。今後の大きな課題ですね。」
── 村田製作所の CSR として,環境への取り組みとともに,電子部品メーカーとしてエレクトロニクス社会の発展に寄与することが掲げられていますが。
関口「現在,セラミックコンデンサの分野は,世界シェアのほとんどを日系企業が占めていて,それぞれの会社が高度な技術をもって切磋琢磨している状況にあります。当社は,小型部品をセラミック材料から作ることで,ほかから真似のされにくいノウハウを蓄積してきました。焼き物は,焼成する前後で組成や特性が大きく変わりますので,分解し分析してもわかりにくいのです。最近,台湾などの企業が力をつけて競争が激しくなっていますが,最先端の小型高性能の製品は新しい材料・技術を開発して先行するといったことの繰り返しですね。セラミック電子部品の生産設備は,ノウハウが詰まっているので,その情報が外部に漏れては困ります。最先端の生産設備に関する情報はトップシークレットで,私も知りたいのですが,関係者以外には社内の者にさえ教えてくれません。」
── ノウハウは会社の財産ですから,その管理は厳重に行われているんですね。
地域社会に対して,取り組まれていることがあれば教えてください 。
関口「小学校関連では,2004年の8月に,地元の長岡京市の小学生を対象に電子部品の説明会を行いました。これは,地域の子ども達を村田製作所に招いて技術系OBが解説を行い,子ども達に科学に対する興味をもってもらうための取り組みです。コンデンサをはじめ,電子部品が日常生活の中でどのようなところに使われているのかを解説しました。
当社は,『そこにムラタがあることが,地域のよろこびであるように』という理念をもっていますが,今後これをもっと強化し,積極的に地域社会との交流を図れるような社内の意識改革と,いろいろな企画を進めていきたいと考えています。」
── 本日は,ムラタセイサク君の話題から,電子機器業界をリードする会社としての企業姿勢についてもお話を伺うことができました。お忙しいところ,有り難うございました。■
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