2007 autumn

三洋電機
CSR部コミュニケーション推進課
課長 平田 勇人 さん

 インタビュー(1)

 三洋電機は,1947年に自転車用発電ランプの開発からスタートし,その後,独創的なラジオを開発,また,電気洗濯機の開発で電機業界に参入しました。家庭電化の黄金期には,テレビや洗濯機を年間100万台生産する大企業に成長し,現在も価値ある優れた商品を作り続けています。  今回は,とくに,暮らしを変える新しい電池として注目を浴びている『eneloop(エネループ)』について,CSR部コミュニケーション推進課の平田勇人さんにお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■新しい充電池「eneloop」■

── 本日は,よろしくお願いします。新しい充電池『eneloop』が発売されて2年が経とうとしていますが,大好評ですね。『eneloop』が開発された経緯についてお聞かせください。

平田勇人さん (以下,平田)「当社では,地球を数多くの生き物が共生する1つの生命体ととらえ,この美しい地球(GAIA)を未来の子どもたちに還すため,『Think GAIA』というブランドビジョンを掲げ,独自の技術と新しい発想で環境・エネルギー・ライフスタイルの3つのプログラムに取り組んでいますが,その第一弾商品として『eneloop』が位 置づけられました。
 当社は,1964年以降,ニカド電池・ニッケル水素電池・リチウムイオン電池などの繰り返し使える充電池を世界中に提供してきており,現在,充電池は携帯電話やノートパソコンなどで馴染みのある存在になっていますが,充電池の認知度はまだまだ低いのが現状です。とくに,乾電池と同じタイプの充電池は,乾電池市場の約100分の1にとどまっており,日本国内だけでも年間に約22億本もの乾電池が使用されています。そこで,充電池の繰り返し使える良さと乾電池の手軽さという双方のメリットを併せ持った,乾電池と同じように使える新しい充電池を開発することになったのです。 」

── 充電池にもいろいろな種類があるんですね。

平田「はい,当社で扱っている主な充電池は大きく分けて3種類あります。ニカド電池は,大きなパワーの出せる充電池で,電動ドリルなどに使用されます。これに対して,リチウムイオン電池は,小型・軽量 の充電池で,携帯電話やノートパソコンに使用されます。ニッケル水素電池は,ニカド電池とリチウムイオン電池の中間的な存在になり,今回の『eneloop』は,このニッケル水素電池になります。
 これまでのニッケル水素電池では,充電したあと時間が経つにつれて自然放電をして容量 が減っていきました。そこで,『eneloop』の開発にあたっては,この自然放電を抑えるために,当社の電池材料技術や電池設計技術を結集し,充電後の容量 を確保することと電圧低下を防ぐことに成功しました。その結果,充電して1年経っても約85%の容量 が確保され,乾電池よりもパワーが長持ちする充電池ができました。 」

── 乾電池と比べていくつものメリットがありそうですね。

平田「そうですね。『eneloop』は,従来の当社製品と比べて性能を倍増させ,約1000回くり返し充電して使えます。このため,充電1回あたりのコスト〔(充電池価格+充電器価格+電気代)÷1000〕は約4円と非常に経済的です。かつ,寿命が尽きてもリサイクルできる環境に配慮された製品だといえるでしょう。
 また,従来の充電池がもっていた自然放電という性質を大幅に抑えたことにより,買ってすぐに使えます。これまでは電池容量 を使い切ってから充電しないと電池の使用時間が短くなるという性質もありましたが,『eneloop』は使った分だけ継ぎ足し充電すればいい。このように,乾電池と同じように使える手軽な充電池の実現に成功したのです。
 さらに,『eneloop』は乾電池よりもパワーが持続するという特長をもっています。これは,充電池の初期電圧を高めて電圧低下について改良を加えたことによりますが,デジカメの機種によっても違いはありますが,比較すると乾電池の4倍以上もの撮影が可能になりました。
 このように,次世代の電池ともいうべき『eneloop』は,コスト・環境・利便性・パワーなど,さまざまな面 で非常に魅力ある製品に仕上がったと思います。おかげさまで,一般のご家庭でも認知が広まりつつあり,取り扱い店舗数は従来の充電池の約3倍以上になりました。また,電気科学技術奨励賞や日経地球環境技術賞,エコプロダクツ大賞環境大臣賞などを受賞し,各界からも高い評価を受けています。 」

── 今回の『eneloop』の登場は,私たちがいつも何気なく使っている電池のあり方を見直すきっかけになるのかもしれませんね。


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