2008 autumn

LiCa・HOUSe
理科ハウス
館長 森 裕美子 先生
 インタビュー(3)

 今年5月にオープンした理科ハウスは,ミニコミ誌『なるほどの森』を1994年から発刊し,科学あそび伝道師として,身近な材料を使って親子で楽しめる実験を数多く紹介してきた森裕美子先生が館長を務める私設の科学館です。
 今回は,森裕美子館長に,理科ハウスを開くまでの経緯や現在の取り組みなどについて,お話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■「理科ハウス」がめざす姿■

── 今後は,どういうお考えでやっていくんですか。

森裕美子先生 (以下,森)「現場主義,現物主義ですね。実際に物を見たり,実際にそこに行ったり,実際にやってみたり。理科ってそういうふうに実験やってみるとか,観察するとか,山へ行くとか,体を動かさないとできない。ボケ防止にもすごくいい。(笑)知識を詰め込むよりも,実物を見たり体を動かしたりすることをもっとやったほうがいいと思うし,自分の経験から言ってるんですけど,そのほうが定着率がいい。記憶に残りやすいんです。いかに感動して実際にたくさん見るかということですね。私,ゴキブリをつかめるようになりましたよ。(笑)この科学館を建てるとき,昆虫を生きたままつかまえて,封入標本をやってみようという話になり,その練習をするために,ゴキブリをたたいてつぶさずに生きたままつかまえました。」

── 小学生はよく来ているようですが,中学生はあまり来ないんじゃないですか。

「ところが中学生も来るんです。それがまた嬉しいんですよ。これから塾なんだけどちょっとだけ来たとか,クラブは何時からで少し時間があるからとか言って,中学生は制服のまま来るんですよ。それも本当に嬉しいですね。やっぱりなって思いました。やりたくないわけじゃない,やる場所がないだけなんですよ。
 私は,ここを“世界一小さい科学館”と呼んでいますが,こういう場所が全国のあちこちにあるといいと思うんです。大きな科学館には大きな科学館としての役割があると思うんですけど,そうじゃなくて,科学的な文庫や,科学的なことをやってくれる寺子屋みたいな小さな場所が一室でもあれば,子どもたちはいろいろできるんじゃないかなと思っています。いま,科学あそびをボランティアでやっている人がたくさんいますよね。そういう人たちは,学校の空き教室を借りたりしていますけど,そういうところも小さな科学館にしようと思えばできます。子どもが科学にふれることのできる環境づくりが大切ですね。
 この前,東大の駒場で滝川先生のガリレオ工房が主催して,科学読み物をもっと広めるためにどうすればいいかというシンポジウムをやったんですよ。いま科学の本が『こんな状況でいいのか?』っていうぐらい売れていないらしいんです。ここ10年ぐらいのことだけど,本当に売れていないんですって。それで,もっと子どもたちの手に届くところに本を届けるにはどうすればいいかって話し合いをしました。 」

── 携帯ゲーム機の影響とかはありませんか。最近の子どもたちはみんな持っていて,時間があるとやっているような気がします。

「あれは面白いですね,うちの子なんかも夢中になっていますから。だから,さらにもっと面 白いものが科学読み物や科学あそびにあればいいわけですよ,要するに。」

── そうですね,こういう場所があるとか,その機会がちゃんとあれば,いいんですけど。

「ないんですよ。だから,テレビゲームに行くしかない。で,我慢している。」

── 子どもたちのいろいろな遊びの中の一つに,科学読み物,科学あそびが位 置づけられるといいですね。逗子においてはここが拠点になったわけですから,「理科ハウス」のようなとりくみがほかの地域でも広まり,たくさんの子どもたちが科学にふれられる場所ができることを期待しています。本日は,ありがとうございました


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