2010 spring
コスモ石油株式会社
インタビュー(3)

コーポレートコミュニケーション部
環境室 大谷恵美子さん

 コスモ石油グループは,原油開発から石油製品・石油化学製品の販売までを一貫して行い,石油エネルギーを安定的に供給しているグループです。今回は,そのグループの中核的存在であるコスモ石油を訪ね,持続可能な社会づくりのために取り組んでいる地球環境問題への対応や社会貢献活動などについてお話しを伺いました。(聞き手:岡本)


 

■ 国内での活動状況(2)−さとやま学校,学校の環境教育支援,エコキャビン ■

── 野口健さんの環境学校とともに,初年度から取り組まれているプロジェクトに,さとやま学校がありますね。

大谷恵美子さん(以下,大谷)「はい,長野県の飯綱町には昔からの棚田の耕作地帯があるんですが,棚田は,人間が手を入れないとだめになってしまうそうです。そこで,この棚田の里山風景を保全し,循環型の農業を行いながら,都会の小学校と連携をとって子どもたちにお米作りを学んでもらおうと考えたのが,このプロジェクトです。東京都と神奈川県の小学校に,飯綱町の農家の方が講師として出向いて指導にあたります。  学校には,通常だと花壇になるところを,水耕栽培用の小さい田んぼにしていただき,子どもたちが田植えから稲刈りまで行います。夏の間は,雑草を取ったりとかもするんですよ。稲刈りのあとは,自分たちのとったお米だけでは足りないので,飯綱町で作った農家のお米を足して食べる体験もしています。田植えをした苗から稲穂ができて,鳥に食べられないように網をして,稲刈りをして,脱穀をして,流通 をとらえるためにスーパーに出て考えていくという,お米作りを通して,農業の一連の流れを学ぶことのできるプログラムを作成し提供しています。子どもたちに話を聞くと,泥遊びをしているようで農家の仕事は面 白いと思ったとか,目線が違うなあと思いました。(笑)」

── このプロジェクトは,講師が小学校に招かれて,講師の方が小学校で農業について指導するという取り組みになりますか。

大谷「そうですね。2007年度までは田植えのときにバスで飯綱町まで行ったこともあったようですが,2008年度と2009年度は行っていません。しかし,また実際の里山で田植え体験をさせたいと先生方はおっしゃっていました。」

── 野口健さんの環境学校のように,実際にフィールドに出て体験する取り組みのほか,学校教育の中で自然の豊かさにふれる取り組みも行っているんですね。

大谷「学校と連携した取り組みは,多くの子どもたちを対象に行えるということがメリットだと考えています。先生方も協力的で,とても関心をもっていらっしゃいます。夏休みとかでも,子どもたちがいないときにも田んぼの世話をして,子どもたちには,みんながきれいにしたからお米ができたのよと言って褒めていました。」

── 学校との連携という観点からは,学校の環境教育支援も行っているんですね。

大谷「これは,学校の環境教育を支援しているNPOが,各地の教育委員会やホームページ経由で各学校にアナウンスをして,手を上げていただいた学校の環境教育の取り組みについて,当基金がサポートするというものです。
 例えば,生物多様性の関係でビオトープをつくりたいとか,ヒートアイランド対策としてグリーンカーテンをつくりたいとか,学校の先生方が環境教育をしたいというときに,ビオトープやグリーンカーテンに関するノウハウがあって近くで活動されているNPOにお声がけして,両者のマッチングを行っています。」

── コスモ石油エコカード基金としては,どのように関わっていらっしゃるのですか。

大谷「手を上げていただいた学校の中から,エコカード基金の趣旨になるべく合致するものを選ぶというかたちで関わっています。2009年度は13校に支援を行いました。」

── これは,どのくらいの倍率があるんですか。

大谷「年によって変わりますね。教育委員会にお願いをしても,各学校のほうにきちんと伝えていただけるところと,とりあえず伝えますという雰囲気のところがあって,とても温度差があるように感じますね。各学校まで届いているのかわからない地域もあるのは,残念でなりません。」

── 学校への周知を考えるときは,経路の難しさもありますし,時期の難しさもありますね。学校では年度ごとに指導計画を立てますので,知らせるタイミングが遅いと取り組めなくなります。今後も取り組みを続けていただき,実績を重ねていくことで,認知が広がっていくのではないかと思います。

大谷「最近は,学校におかれても,環境教育に関する意識は高まっているのではないかと思っています。」

── エコ意識の高まりというお話では,2008年の10月から始められたエコキャビンスクールというプロジェクトも面 白い企画だと思います。内容をご説明いただけますか。

大谷「このプロジェクトは,岩手県に廃校になった学校がありまして,そこで子どもたちに自然エネルギーを利用した生活を体験してもらうというものです。自然エネルギーで生活することのできる家なので“エコキャビン”と名づけました。生活をするために,まずは太陽光パネルを使って電気をつくることから始めました。通 常の電力を使わない生活では,どういう工夫が必要になるのか,子どもたちに考えてもらい,実際に体験することでエネルギーの大切さを感じてもらいたいと思っています。」

── これまでお話を伺って,コスモ石油エコカード基金では,さまざまな観点から幅広い取り組みを進めてきていることがよくわかりました。今後は,どのような展開を描いているのでしょうか。

大谷「そうですね,幅広い取り組みは維持しながら,特にエコカード会員様向けには,活動に参加していただけるようにプロジェクトの充実を図りたいと考えています。現在,日本社会全体が不況であえいでいる状況で,生活も大変ななか,会員様には年間500円という会費をご負担いただいていますので,もっと会員のみなさまに対して,活動の“見える化”をしていかなければならないと思っています。
 また,次世代育成支援プロジェクトを進めるなかで,学校の先生方からも,いろいろとご意見をいただいていますので,そういう機会には積極的に立ち会って,実践的なご意見を伺いながら,さらに効果 のある取り組みを進めていきたいと思っています。
 当基金としましては,このような努力を続け,持続可能な社会の実現や次世代の育成という大きな目標が達成できればとても嬉しいなと,担当としては感じています。」

── 今後,コスモ石油エコカード基金が大きく飛躍されることを期待しています。本日は,お忙しいところ,お時間をいただきまして,ありがとうございました。■


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