2007 spring

パナソニックセンター東京内
スーピア
喜納 厚介 館長 インタビュー(1)

 リスーピアは,2006年8月に松下電器がオープンした理数教育施設で,小中学生をターゲットに,理科の
面白さや驚き,算数・数学の美しさや不思議さを伝えることで,子ども達の“学ぶ”心を育てることを目的にしています。今回は,リスーピアができるまでの経緯や,科学館としての特色,学校教育とのつながりなどについて,喜納厚介館長にお話を伺いました。

(2007.1.17 聞き手:編集部 岡本)

 

■リスーピアができるまで■

── 本日は,よろしくお願いします。リスーピアのオープンは昨年の夏ですから,開館から半年ほど経ちましたが,まずはリスーピアをつくった経緯についてお聞かせください。

喜納厚介館長 (以下,喜納)「昨今子どもの理数離れについて国のレベルでも議論され,対策をとられていますが,企業としてもできることがあるのではないかという考えから出発しました。日本は,資源に乏しい国であり,今後とも技術立国であり続けなければなりません。私達 製造業は,よい商品を提供し続けなければならず,そのためには何よりも優秀な技術者を育てなければなりません。日本に優秀な技術者が育てば,日本にある製造業は栄えます。現在の国の大きな流れに沿ったかたちで,製造業としてできることを考えたのが始まりです。」

── リスーピアという施設をつくる動きは,いつごろからあったのですか。

喜納「2004年秋ぐらいからです。以前ここには恐竜化石の博物館がありました。その展示の更新時期になり,次の企画について社内で議論になったとき,最近は理数離れが起こっていると言われているが何かできないかという話になったんです。」

── できたのが昨年の夏ですから,1年半ぐらいかけて準備を進めてこられたということですね。開館までの間,どのような議論が交わされたのですか。

喜納「理科と算数・数学をテーマにした施設をつくるプロジェクトの担当になってから知ったのですが,科学をテーマにしたよい施設が身近に沢山あるんです。また,近隣には日本未来科学館という立派な国がつくった施設もある。そうしたなか,どういった施設をつくるべきかを,よく議論しました。理数離れ対策=理数を好きになってもらう施設ということでは,楽しく学んでもらう工夫・仕組みに重点をおいて企画・構築を進めました。ほかの施設との差異としては,算数・数学をテーマにした点です。
 まず,ターゲットをどう設定するか考えました。どの年齢層で理数離れが起こるのかを調べたところ,理科の興味を急激に失う年代が小学校3年生から中学校3年生までの間であるという統計がありましたので,そのデータを参考にターゲットを設定しました。とても微妙で難しい年代ですが。
 そして,ターゲットが決まったことにより,次にテーマを考えました。日本科学未来館がテーマにされておられる最先端技術ではなく,子ども達にも理解しやすいものということで,ベーシックな理科や算数・数学の原理・法則をテーマにしました。
 また,子ども達の学力は国際的に見てもまだ上位ですが,じつは大人達のほうに課題があるという統計があり,これは丸暗記の弊害で,学び・知識が本当に身についていないからなのではないかということで,“身につく学び”ということにも焦点を当てました。
 展示のステップを工夫したり,展示解説にパネルではなくてPDA(携帯情報端末)を活用したり,家に帰ってから展示の復習ができる仕組みを作ったり,子ども達に楽しく学んでもらえる様々な工夫をしました。 」

── リスーピアをつくる際には,近くに日本科学未来館がある場所で,どのような独自性を出していくかという議論が交わされた結果 ,ベーシックをテーマにした,小中学生向けの“学び”にこだわる施設になったんですね。


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