■学校とのつながり■
── これまでリスーピアの特色,企業としての役割,設立の経緯などについてお話を伺いましたが,学校とのつながりについて少しお聞かせください。
喜納厚介館長 (以下,喜納)「学校連携は重要なテーマと考えており,取り組んでいます。具体的には,近隣の小学校などと連携しいくつかの取り組みが進行中です。例えば,素数ホッケーを活用して各けたの数をたして3の倍数になったら,その数字も3の倍数であるという算数の学習に,『必勝法を探そう』のような授業としてプログラム化したいという話をいただいています。なるべく学校のカリキュラムなどを視野に入れながら,授業として使っていただけるようにしたいと思っています。
ほかには,タングラムという図形を組み合わせるゲームでは動物などの形をつくるようになっていますが,正方形などの単純な形をつくるほうが“学び”に直結することもあり,授業での活用向けにソフトを更新するなど,できる限り学校からの要望に沿って使いやすいようにしていきたいと考えています。」
── 学校現場では,近年,従来にも増して報告書作成などの仕事が増える傾向にあるようで,時間に追われがちな状況とも聞いています。ですから,施設の利用についても,どういうカリキュラムで何時間の扱いなのかという具体的な指導案とともに提示しないと,なかなか先生方が取り上げるには難しいのでしょうね。
喜納「そうなんです,先ほどの素数ホッケーの話もすぐに始める予定だったんですが,学校側にいろいろと新しくやらなければならないことが入ってきたようで,まだ実践はできていません。私達もできるだけこうした学校と連携した取り組みを,サポートさせていただいて,実現させていきたいと思っています。」
── 公教育である以上,一つの企業の宣伝になってはいけないとか,企業名を大きく扱うのはよくないとか,そうした面
はありますが,最近は企業のCSRや社会貢献への関心も高く,学校側も従来よりは柔軟な対応をするケースも増えているように感じます。
喜納「それと,普及にあたってはピンポイントの効果
もすごくあると感じます。熱心な先生のまわりには多くの先生が集まりますので,熱心な先生お一人からけっこう広がりますね。今も,ある地区の先生と電磁石の実験を面
白くしようと考えています。」
■理科教育への願い■
── 今の理数教育の現状に対して企業が何とかサポートできないかという観点からリスーピアという施設がつくられたとのことですが,今後,日本の理数教育が進んでいくべき方向や,そこへの貢献の仕方について,思いや願いがあればお聞かせください。
喜納「学校で理科,算数を教える時間が減っていて大変だと思いますが『不思議!』とか『面
白い!』という素材,例えば,算数・数学における美しさや,理科における不思議さについて,楽しく伝えられるといいと思っています。理数を学ぶ理由や科目の特性を伝えることも面
白いと思います。理科でいえば,不思議な現象について追究してきた歴史があり,科学者が夢中になってきたことや,教科書に載っていても大きな発見があればドラスティックに変わる可能性があるという面
白さなどです。 理科とか算数に興味をもってもらうきっかけづくりとして,多様な取り組みをしているリスーピアなどの科学館をご活用いただきたいと思っています。なぜなら,子ども達の好奇心が何にひっかかるかわからないからです。どこかにひっかかって面
白いなと思ってくれたときのアクセルのかかり方,もっと調べたいなと思ってくれたときのパワーというのは,すごいですよ。
」
── 学校で学習する内容が減ってきているなか,子どもの本当の楽しさ,科学や数学に対する興味がこういう施設をきっかけにひきだされて未来の科学者が育っていけばいいなと思います。まだ開館から間もない施設ですが,非常に反響がいいというお話ですので,今後,日本の理数教育に大きな貢献をしていただきたいと思います。
喜納「私達の取り組みが価値あるものとして認められるように,これまで説明してきた恒常的な活動のほか,『ウェルカム・ワークショップ』という見学前に実験ショーをしてモチベーションを高めてから見てもらう取り組みなどもふくめ,今後とも継続的に実施していきたいと思います」
── リスーピアを充実していくことは,ほかの企業がパナソニックの取り組みを評価して自らも行うという波及効果
も大きく期待されます。そうしたかたちで企業が科学技術立国をもう一度もりたてていただけるのは,非常にうれしいことです。本日は,お忙しいなか,有り難うございました。■
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