2007 spring

パナソニックセンター東京内
スーピア
喜納 厚介 館長 インタビュー(3)

 リスーピアは,2006年8月に松下電器がオープンした理数教育施設で,小中学生をターゲットに,理科の
面白さや驚き,算数・数学の美しさや不思議さを伝えることで,子ども達の“学ぶ”心を育てることを目的にしています。今回は,リスーピアができるまでの経緯や,科学館としての特色,学校教育とのつながりなどについて,喜納厚介館長にお話を伺いました。

(2007.1.17 聞き手:編集部 岡本)

 

■繰り返し学習できる仕組み■

── まだ開館して半年経っていない時期ですが,子ども達の反応を見た手ごたえとか,方向性に対する現時点での評価については,どのように考えていますか。

喜納厚介館長 (以下,喜納)「オープン以来6か月間,1月末の時点で約8万人,平均して毎月1万人強の来館者数です。リスーピアは,けっして広くない施設ですので,ご好評いただいていると思っています。
 リピーターも多いんですよ。ある子どもがお父さんを連れてきたり,従兄弟を連れてきたり,本当はその子が何回も来たいんですね。(笑)それに,社会的にも危機意識があるようで,企業のトップの方や省庁の方もかなり見学に来られています。
 また,ここで働いている人達のモチベーションが非常に高いですね。ある説明で子どもがわからなったら違う例を出して説明をする。その説明で子どもが理解できたと感激してメールを送ってくれる親御さんもいました。目的が社会的に高いうえ,一日じゅう子どもの反応が見られることもあって,みなとてもやる気を出して勉強熱心に働いてくれています。そういう意味でもうまくいっていると思いますね。 」

── リピーターは,来館者が渡されるカードによって把握されているんですか。

喜納「カードは把握が目的ではなく,家に帰ってパソコンでURLとIDとパスワードを入れると個人の体験が反映されますから,それをもとに復習してもらうのが目的です。PDAで見た内容の復習であったり,さらに深い内容を知ったり,それらをホームページで見ることができるんです。リスーピアのホームページは,来館者の見られる内容が来館していない人の見られる内容の10倍もあるという珍しいサイトです。面 白い体験をしても忘れていくものですから,それを家に帰ってからもじっくり見ていただけます。なんと3階の来館者の25%がホームページを見ているんですよ。」

── カードは,リスーピアに来た証だけでなく,来館者が家に帰ったあとにホームページを見てもらう仕掛けにもなっているんですね。

喜納「そうなんです。記念撮影の写真もあえてプリントアウトせず,家に帰ってホームページにアクセスして見ていただくようにしています。それは,写 真を見るときに,ほかの展示コーナーも見たくなるような地図の中に写真を見るボタンを設定し,復習を誘導することをねらっているんです。」

── IDとパスワードを発行することで,このカードは会員証のようなものになりますね。すると,どの年齢層が何人来ていて,リピーターはどの年齢層が多いかなどもわかるんですか。

喜納「現在,このカードには属性は入れていません。ですから,ホームページにアクセスしたときにアンケートで聞いたりしています。そのアンケート結果 では,小学校1年生から中学校1年生までが,満遍なく来ていただいているようです。」

── ホームページと実際の展示でうまく連携をとっているんですね。

喜納「逆に,見ていない展示については,深い情報が見られないんです。十数個の展示のうち三つしか見られなかったら,また行きたいなと思ってほしいです。そして,見た展示を増やしていけば,家でもたくさんの内容が見られる。そういうきっかけにもしたいと考えています。」

── そうなると,いずれ全ての展示を見てしまう子どもが多くなりますね。まだ開館から半年ですからしばらくは考えなくてよいのかもしれませんが,中期的にみて,展示の更新についてはどのような予定ですか。

喜納「なるべく普遍的なテーマを選んでいますので,丸ごとテーマをなくしてしまうというわけにはなかなかいきませんが,展示演出の見直しや,コンテンツの追加を行っていく予定です。例えば,手を上下させて音を高くしたり低くしたりする展示があるのですが,手元に数値が表示され,前の画面 に波形が映し出されるものでした。音は何であることを学んでほしいのに,手元ばかり見て波形を見てもらえなかったので,波形を合わせるゲームに変更したところ,人気の展示になったりしています。」


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