2008 autumn
株式会社ダスキン
暮らしの快適化生活研究所
植松秀行 所長
藤原玲子 主務

 インタビュー(2)

 モップ,マットのレンタルから始まり,掃除関連業界をリードしてきたダスキンは,現在,創業から45年目を迎え,掃除関連サービスのほかに,フードサービスや介護関連サービスなど幅広い分野でわたしたちの暮らしをサポートしています。
 今回は,ダスキン『暮らしの快適化生活研究所』の植松秀行所長と藤原玲子主務に,ダスキンが取り組んでいる学校教育支援活動について,お話を伺いました。

              (聞き手:編集部 岡本)

 

■調査・研究から掃除教育へ■

藤原玲子主務 (以下,藤原)「調査のとき,子どもたちに焦点を当てたことによって,ダスキンの取り組みに広がりが生まれたと考えることもできるでしょう。生活者の一人としての子どもたちに視点を当てると,子どもたちは一日のうちの7~8時間を学校で過ごします。子どもたちの実態を知ろうと思ったら学校を調べないといけない。そのような発想で,調査・研究の対象が学校に移っていったと聞いています。一方,同じ時期に,学習指導要領が変わって『総合的な学習の時間』が導入され,先生方がその時間にどんな指導をしたらよいのかわからないという状況になりました。つまり,ダスキンの現在のような取り組みができたのは,わたしたちの調査・研究の結果 から現場の先生が掃除の指導に困っているという現状把握だけではなく,『総合的な学習の時間』の導入に際して,その時間の使い方をどうしようかと先生方が悩まれていたという側面 もあったのだと思います。
 掃除について,先生方は,どこから情報を入手したらいいかわからない。また,子どもたちも,掃除をあまりしないまま学校に入ってくることが多い。こうした状況があり,教育現場の先生から,掃除の時間にどう指導したらよいかわからないので教えてほしいという問い合わせが入ってくるようになりました。現在,当社のコールセンター経由で『暮らしの快適化生活研究所』に入る問い合わせでは,出前授業をやってほしいという内容と同じくらい,学校の先生を集めるので指導してくれませんかという内容が多いんです。これは,『総合的な学習の時間』の導入によって,教科学習の枠だけでなく,もう少し広い視野から子どもたちの力を伸ばしたいと先生が望まれるようになり,掃除の時間にも目が向けられるようになったのかなと思います。」

── ダスキン側の「掃除の大切さを伝えたい」という想いと、『総合的な学習の時間』の導入や実際の掃除の仕方を教えて欲しいという学校側のニーズとがうまく重なったところで掃除教育が誕生したという経緯があったんですね。それでは,ダスキンが取り組まれている掃除教育の中身について少し具体的に聞かせていただきたいんですが,まずは,どういう形でカリキュラムを作られていったのでしょうか。

藤原「ご存知のとおり,ダスキンは掃除の会社であり,教育機関ではありませんが,『暮らしの快適化生活研究所』が生活者の一部として子どもたちに焦点を当てたことで,学校掃除についても知る必要性が出てきました。そして,次世代の子どもたちに掃除の大切さを知ってもらおうという想いから,活動を始めました。ちょうどそのときに,経済産業省と文部科学省の共管の財団法人「コンピュータ教育開発センター(CEC)」の公募事業である『産業界との協力授業』に申請しました。結果 的に採択されて,吹田市内の二つの小学校で15コマの授業をやりました。
 そこでわかったのは,いままで掃除の指導というものを,授業として認識し,教育的効果 や意義をもっていると考える先生は少なかったということです。掃除というのは,汚くなったものをきれいにするだけというイメージで,それをもって何か力を伸ばすとか,授業するとか考える先生は少ないんです。ところが,授業としてやってみると,掃除というのは授業として成り立つというご意見が多く出てきました。同じ掃除をするにしても,どうして掃除するの?とか,どうして掃除は大切なの?といった理由を理解したうえで掃除に取り組むと,子どもたちの掃除に対する意識が変わってきたんですね。
 学校の掃除は,だいたい毎日15分ありますから,これを1年間積算すると約3000分ある計算になります。1日15分,掛けることの1週=5日,掛けることのひと月=4週,掛けることの夏休みと冬休みを除いて1年=約10か月,これで約3000分です。これを1コマ=45分の小学校の授業に換算すると,約66コマの授業数に匹敵する時間を子どもたちは掃除の時間として費やしていることになります。しかし,日本各地の小学校にダスキンが伺って,いろんな機材を持ち込んだりした大掛かりな授業ができるわけがありません。それでは,どこの学校でも先生がその資料を見れば授業ができるようなものを作る必要があるだろうということで,小学生対象の掃除教育カリキュラムの制作に取り組みました。
 今では,中学校用のカリキュラムもできました。小学校だけではなく,中学校の生徒たちも掃除ができないという現場の先生方のお声がありましたので。」

──『暮らしの快適化生活研究所』が2000年にできて,2003年から実際に掃除教育に取り組まれ始めたんですね。中学校への取り組みは今年からですか。

藤原「始めたのは昨年度からです。しかし,小学校と違って,やはり中学校は時間がとれないようですね。中学校にも同じように『総合的な学習の時間』はあるけれども,その時間を使われる中学校はなかなかないようです。小学校の場合は,生活科だったり,家庭科だったり,道徳だったり,それから『総合的な学習の時間』で,掃除の勉強をしたいという学校があるんですけど,中学校の場合は,せいぜい1年生が入ったばかりの4月のオリエンテーションとか,最近は職業体験をされている学校が多いので,その前に掃除のことを学ばせたりとか,非常に限られています。また,時間が取れても1コマとか2コマしかありません。ホームページを見ていただいたらわかるんですけども,作り方が小学校とはまったく違っていて,授業2コマ+発展授業みたいにして,それぞれが単独でできるような内容にしています。」


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