2008 autumn
株式会社ダスキン
暮らしの快適化生活研究所
植松秀行 所長
藤原玲子 主務

 インタビュー(3

 モップ,マットのレンタルから始まり,掃除関連業界をリードしてきたダスキンは,現在,創業から45年目を迎え,掃除関連サービスのほかに,フードサービスや介護関連サービスなど幅広い分野でわたしたちの暮らしをサポートしています。
 今回は,ダスキン『暮らしの快適化生活研究所』の植松秀行所長と藤原玲子主務に,ダスキンが取り組んでいる学校教育支援活動について,お話を伺いました。

              (聞き手:編集部 岡本)

 

■掃除教育の成果 ■

──掃除教育を5年間ほど取り組んできて,どのような感触をおもちですか。子どもはこう変わったとか,学校はこう変わったとか,先生方の評判はいかがですか。

藤原「2004年度に,近隣の学校の先生方や教育委員会の先生方が集まりまして,『学校の掃除教育研究会』が発足したんですね。その会で,まずは学校掃除の特性を出し,それぞれの特性に対してどんな力を伸ばすことができるか,先生方で話し合っていただきました。その結果 ,掃除の知識・技術の習得はもちろん,段取りする力や,きれいな状態を作り上げる力,洞察力,観察力,達成感,物を大事にする環境への配慮,みんなの役に立とうとする公共心,公徳心,愛好心,協力する気持ち,まじめに取り組む態度など,いろいろな力や態度を育てていけるのではないかという意見が出ました。
 ある小学校で,6年生の子どもたちが卒業する前に,「お礼掃除」ということで,日ごろ使っていないところ,体育館とか倉庫とかをきれいに掃除してから卒業するという取り組みをされている学校があります。その小学校では,『総合的な学習の時間』を22コマ使ってカリキュラムを活用し,まずは自分たちの日ごろの掃除を見直すところから始め,どうして掃除をするの?と考えたり,身の回りの物を使って掃除用具を作ってみたり、汚れに合った掃除の方法を考えたりしたそうです。その後,最後に「お礼掃除」をさせたところ,子どもたちの掃除の仕方や,意識の変容が見られたそうです。授業の中で自分たちが作った掃除用具を使って掃除をすることで,子どもたちの様子が変わったといいます。従来のぞうきん,ほうき,ちりとりという3大掃除用具で掃除をしていたころは,10分ぐらい経ったら戻ってきていたのが,授業の中で自分たちで作った掃除用具を使うようになると,15分経っても戻ってこなくなったそうです。そして,あまりにも楽しそうに6年生の子どもたちが掃除をするのを見た1年生の子どもたちは,わたしもあれを作りたい,わたしもあれで掃除をしたいと言いだし,学校全体がすごく掃除に対して前向きになりました。このように,『総合的な学習の時間』で掃除の授業をして,それを実践する場所として掃除の時間を位 置づけ,授業と掃除時間をうまく連携させることで,子どもたちの意識は,同じ掃除をさせるのでも全然違ってくると思います。」

── いまの事例では,自作の掃除用具は何を作ったんですか。

藤原「すごく難しいことではなくて,割りばしの先にいろいろなものを巻きつけたものを作っていました。なかには鉄パイプみたいなものを拾ってきてすごく大きな棒を作り,黒板の上とか手の届かないところを掃除する子どもがいました。また,それとは反対にすごく細かい綿棒とかを持ってきてタイルの目地まで掃除し始めた子どももいましたね。自分たちの“マイ掃除用具”って言ってるんです。  発想が子どもと大人では違うので,大人だったら一方にだけしか作らないのを,子どもは両方とも掃除用具にできるように改良してみたり,同じ棒のようなものであっても,大きなものから小さなものまで用意してみたり,そのあたりに転がっているものを持ってきて掃除用具にします。子どもならではの発想が楽しいですね。」

── 暮らしの快適化生活研究所では,いま,アイデア掃除用具コンテストを行っていますね。

藤原「はい。テスト的に限定で実施しています。コンテストを行うに至った大きな要因として,掃除用具ひとつ変えることによって,掃除に対する子どもたちの関心がこんなにも変わるんだという発見がありますね。
 それと,いまでこそ企業と教育現場という関係が築けていますけれど,掃除用具の話になると商品の売り込みととられることもあるので、あえて掃除用具の部分はカリキュラムでふれずにいました。ところが,最近は世間の流れが変わって,どんどん企業が教育現場に入ってきて,教育現場でも自分たちでわからない部分は企業に教わろうという先生が増えてきて,そうした中,近隣の教育委員会の先生からも,「ダスキンさん,そろそろ掃除用具の提案なんかもしてくださいよ。」と言われるようになりました。ただ,その先生がおっしゃっているのはもちろん,単にダスキンのモップを使うということではなく,掃除のプロから見てこういう用具があったらこういう場所を子どもたちが掃除するのに適しているという提案をしてほしいという意味です。
 実際,ほうきひとつとっても子どもたちには長いんですよね。それを持って子どもたちにほこりを舞い上げずに掃こうと言っても,それは難しいと思います。やはり,子どもたちに合わせたサイズの用具が必要だと感じますね。小学校だと1年生と6年生では全然違うので,小さいものからだんだん自分の背丈に合わせられるような伸縮自在のようなものが必要だと思いますし,水モップも,すごく子どもたちにとっては絞りにくいんです。足で踏みながら片手で挟んで絞るなんて,1年生の子どもたちには難しいです。サイズであったり単純化した使いやすさであったり,そういう配慮が必要なんじゃないかなと思います。」

── 子どもたちの目線で見ていけるというのは,この掃除学習のよい点ですね。小学校1年生ならば1年生なりに掃除ができる用具が必要でしょうし,6年生になればもう大人に近いものを持たせるなど,子どもたちの発達段階に応じて掃除用具も進化していくと面 白いですね。


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