■博物館と学校とのかかわり■
── 学校の先生とのかかわりというのは,具体的にはどういったものがありますか?
中川志郎先生 (以下,中川)「学校の先生が博物館を利用する形としては,従来は団体がやってきて一定の時間の中で学校でつくった学習シートに書き込んでいく,それで時間がくるとバスでさあっと引き揚げていくというものでした。
学校と博物館の最も大きな違いは何かといったら,実物があるということですよ。学校は教科書で教えるけれども,博物館には教科書はないが実物がある。その二つが合致してはじめて自然科学がわかるんです。そのためには,博物館側から学校の先生方に,博物館のやっていることを知っていただかなければいけない。いつ来ても,インストラクターズルームには学芸員がいて,「こういうことを知りたいんだけれど,いつ来て,どういうことをしたらよいだろうか」という相談のできる部屋をオープンと同時に立ち上げました。電話でもいいし,来てもいいし,手紙でもいい。いまでもいちばんアクセスが多いですね。そこでは,保育所や幼稚園,小学校,中学校,いくつかのパターンを用意して,その中でチョイスをしていただく。たくさんのメニューを揃えておいて,その団体に最も合った形で利用していただくようにしています。
その延長線上の取り組みで,年1回夏休みの間に3日間,学校の先生方はもちろん,ご家族も一緒に呼んで夏期講習をやっています。奥さんが聞いていてもお子さんが聞いていてもいいし,先生が受講している間,博物館の中を見ていてもいい。なぜかというと,先生が感ずるものと奥さんが感ずるもの,お子さんが感ずるものはそれぞれ違うからです。家に帰って博物館について話し合うことで,新しい視野が開けるんじゃないかということなんです。」
── 面白いですね,やはり子どもがどう見ているかを知ることは,特に先生にとっては必要ですからね。
中川「先生は,いつも子どもと接しているからといって,自分の子どもがどう見ているかは意外と知らなくて,他の子どもはよく見ているけれど自分の子どもはよく見ていないとかもあり得ますからね。」
── 実際に使われる機会としては,学校の遠足が多いんですか?
中川「そうですね,やっぱり圧倒的に多いのは学校の遠足なんですね。遠足は,最初に申し上げたように,バスツアーと同じような見方にどうしてもなってしまう。バスツアー的な遠足から脱却するためにはどうしたらいいか,その相談の場がインストラクターズルームなんです。最近だいぶ効果を上げてきていると思います。
それと,学習シートを博物館でつくってみようということで,最初は博物館だけでつくっていたんですが,いまはモデル校を設けて,博物館と学校とが共同して制作するということになって,いまが第2作ですね。先生方の考えていること欲していることと,我々が先生はこうして欲しいだろうなと思っている間には,けっこう開きがあって,それを調整することが必要なんですね。それじゃないと利用できないですよね。」
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