2005 autumn

旭川市立旭山動物園
広報 山崎 哲夫 さん
インタビュー(1)

 入園者数が今年の7月だけで27万5000人(全国第一位 )と圧倒的な人気を誇る北海道の旭山動物園。
 今回は,大人気を博するに至った経緯や,ユニークな展示の仕方について,広報の山崎哲夫さんにお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■旭山動物園の経緯■

── では,よろしくお願いいたします。初めに,旭山動物園が人気を博するまでの経緯について教えてください。

山崎哲夫さん (以下,山崎)「旭山動物園は,昭和42年に開園しましたが,当時,旭川市にどんな新しい施設が欲しいかアンケート調査をしたところ,動物園という声が多く,“市民に安価な休養施設を提供する”という目的で造られたんです。開園時は,市民待望の施設ということもあり,年間40〜50万もの人たちが毎年のように入園していました。特に,昭和58年度は,動物園にジェットコースターなどの遊具が併設され,入園者数も59万8000人とピークを迎えました。しかし,遊具には流行り廃れがあるもので,そこからは年々,入園者数が減っていき,平成8年度には26万人,往時の半分にまで減少してしまったのです。こうなると,旭山動物園をつぶしてしまって,福祉施設でも造ったほうがいいという批判の声も聞かれるようになりました。」

── 旭川市民の待望の施設だったにもかかわらず?

山崎「ええ。施設は赤さびだらけだし,動物はみんな寝てばかりだし,という話が本当にあったそうです。そのような状況のなか,平成9年度は旭山動物園の開園30周年にあたり,数年ぶりに記念事業として予算がついたんです。そこで,動物園では『こども牧場』という,子どもがブタやヤギ,ウサギなどと触れ合える広場を造りました。これによって,入園者数は4〜5万人増えたことから,投資すれば再生するのではないかという期待が込められるようになったんです。施設を造れば入園者が増えたので,しだいに新しい施設が造られ,入園者数は一昨年で約82万人,昨年度は約145万人を記録し,7月度と8月度は月の入園者数が上野動物園を抜いて日本一になりました。さらに今年度の入園者数は,175万人ほど見込まれています。
 じつは,新しい施設を造ったからといって入園者数が増えるとは限りません。上野動物園にしても円山動物園(札幌市)にしても,新しい施設は造っていますが入園者数は減っています。新しい施設を造っても,それが驚きや興味を感じるものでなければ誰も来ないし,来ても1回限りでリピーターにはならないでしょう。旭山動物園では2回来た,3回来たという人が多いですね。例をあげると,『あざらし館』が昨年6月にオープンし,その効果 で6月度は入園者数が2倍だったんですよ。ところが,7月度は2倍,8月度は1.5倍,9月度は2倍,10月度は3倍の入園者数なんです。通 常の開館効果はひと月程度といわれていますから,その効果だけでなく,まさに人気が持続していることになります。
 入園者数が減っていた頃,どうしたら旭山動物園の入園者数が増えるのか,みんなで毎日のように会議をしていました。そこで考えられた案が“飼育員が前に出ること”です。飼育員は普通 ,動物にえさをやり,寝室を掃除して,健康管理をしていればいいという感覚がありますが,うちの飼育員は,解説もします。この飼育員の解説によって,入園者と職員で話のキャッチボールが成立し,大人が来るようになりました。一般 的に動物園の入園者数は大人が子どもの半分ですが,うちでは逆転しています。このように,動物園の改善にあたって,“大人が楽しめる動物園”をめざしたんです。ですから,旭山動物園は,怪獣ショーを催したり動物に芸をさせたりはしません。それよりも,動物がもっている本当の力を発揮できる施設を造ったほうがビックリするだろうと考えました。この考えをもとに,平成元年頃,動物が力を発揮できる驚きのある施設とはどういうものか,一つ一つ絵を描いていったんです。これは現在,14枚のスケッチとよばれています。」


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