2005 autumn

旭川市立旭山動物園
広報 山崎 哲夫 さん
インタビュー(5)

 入園者数が今年の7月だけで27万5000人(全国第一位 )と圧倒的な人気を誇る北海道の旭山動物園。
 今回は,大人気を博するに至った経緯や,ユニークな展示の仕方について,広報の山崎哲夫さんにお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■命のぬくもりを伝える■

── 旭川市に,このような市営の動物園があるということの意味,動物園が果 たす役割などについて,お考えを聞かせてください。

山崎哲夫さん (以下,山崎)「やはり,伝えるのは命ですね。命のぬ くもりを少しでも皆さんにわかってもらいたい。最近は入園者数で騒がれていますが,ヤギに触れてもらったり,寝そべっているユキヒョウが脈をうっている様子を見てもらったりして,動物は生きているということを伝える場が,動物園なのだと思います。ただ動物が寝ている姿は,図鑑を見ればわかるわけです。私たちは,生きているものを見せるんです。狭い檻に動物を閉じ込めてはかわいそうだと言う方がいますが,動物園がなければ,こういう生きている動物がいることを知らせることもできません。動物の姿を見ることができないような自然の動物園もありますが,それでいいのでしょうか。それだって,結局は“箱庭”なんですよ。“箱庭”に動物を放して,ほとんど見られないような動物園は,その目的を果 たしているとは思えません。ある動物が,こういう姿で,こういう行動をするんだということを,きちんと見せるのが動物園の使命だと思います。」

── 来園者には,動物にじかに接してもらい,見てもらうことが大切だというお考えですね。

山崎「そうです。うちの施設は,どれをとって見ても一歩間違えばかなり危険ですよ。例えば,オランウータンの綱渡りでは,オランウータンは落ちないといいますが,途中で落ちたらどうすればいいのでしょう。寝ているユキヒョウを下から見られる施設も,あれはジャンプすれば手が届く高さなんですよ。ジャンプして手を噛まれたらどうでしょう。ペンギンにも手を伸ばせば届きます。『こども牧場』のヤギも機嫌の悪いときがあります。どこを見ても危険ばかりですよ。だからといって,オランウータンの渡り綱を囲ったりはしません。ペンギンと向かい合わせられるようになっているからこそ,ペンギンの生態が見られるんです。こうした姿勢が来園者にも伝わっているのか,ペンギンやユキヒョウに触ろうとする人はいませんし,トラにおしっこをかけられてクリーニング代を請求に来る人もいませんね。」

── 逆に,動物に触ろうとして事故が起これば,施設そのものの見直さなければならなくなりますね。動物園側で危ないからふたをするのではなく,あえてふたを開けることが,来園者のモラルを高めることにもつながっているようですね。

山崎「そうであることを信じたいですね。こう考えてみると,いまの施設を考え出した職員もすごいし,この施設に来てマナーを守る人もすごいし,この施設を許可した市の関係者もすごいなと思いますよ。普通 であれば,『落ちたらどうするんだ』と万が一のことを考えますからね。それを,『やってみろ,責任はとるから』といって後押ししてくれたのが,いまの成功に結びついたんじゃないかと思います。」

── そうですね。いろいろな要素があって,旭山動物園の成功があるんですね。本日は,お忙しいなか有り難うございました。


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