2005 summer

県立ぐんま天文台
台長 古在 由秀 先生
インタビュー(4)

 直接目でのぞいて観察できるものとしては世界最大級の150cm望遠鏡をもつ県立ぐんま天文台は,1999年7月に 全面オープンしました。
 今回は,開設の経緯や天体の話について,台長の古在由秀先生にお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■10番目の惑星■

── 最近の天文に関する面白い話題には,どのようなものがありますか?

古在由秀先生 (以下,古在)「ぼくは,もともとは太陽系の研究をしていたんだけど,最近,新聞で10番目の惑星が発見されたなんていう報道がありましたね。NASA(アメリカ航空宇宙局)はときどき突拍子もないことを言い出すんですよね。(笑)いま,あの天体は,小惑星として分類されているんですよ。それをNASAが惑星と言い出したんです。NASAがゴリ押しすると通 っちゃうんですよ,癪なことに。
 そうした話題としては,冥王星みたいな天体はたくさん見つかっているんですよ,あのあたりに。それでじつは,冥王星を惑星ではなくて小惑星にしようという提案がずいぶんあるんです。ところが,いまある惑星のなかで,アメリカ人が見つけたのは冥王星だけなんですよ。アメリカ人としては,惑星の発見者からアメリカ人がいなくなっちゃうから,譲らないわけです。しかし,大勢としては,冥王星は,惑星の名前をつけるには小さすぎると思っているんじゃないですかね。NASAは発表した天体が冥王星より大きいから惑星だと主張しているんですが,そもそも冥王星自体が惑星から外されようとしている時期なんです。」

── 私が習ったのも冥王星までが惑星ですが,将来的には冥王星は小惑星になる可能性もあるということですね。

古在「なかなか難しいんですよね。惑星の定義は何だと言われるのは非常に困る問題で,いま国際天文学連合は,ワーキンググループをつくって惑星の定義をはっきりさせようとしているけど,なかなかはっきりできない。」

── 惑星の定義は,大きさが基準になるんですか?

古在「その要素が大きいでしょうね。ただ,大きさというのも,なかなか正確にはかれないんですよ。かなり大きな望遠鏡で見ても点なので,そうした小惑星の大きさをどうやって出すかというと,その天体の温度をはかるんです。冥王星あたりだと0度以下で,赤外線とかマイクロ波とかを出しているから,そのへんの波長をはかって温度が推定できるでしょ。一方,天体までの距離は軌道がわかればすぐに出ますから,その場所での太陽光の強さがわかる。そして,天体の反射率を仮定して,温度を計算できる。すると,温度の観測値と計算値から,光がどのくらい反射しているかがわかり,明るさから大きさが計算できるんです。
 ところが,あの小惑星は,赤外線で観測できなかったから,明るさから推定して冥王星より大きいと言ったんだろうけど,反射率がわからないと大きさはわからないんです。」

── 大きさをはかるのも,かなり難しいんですね。
   惑星の話題では,NASAの火星探査もありますが。

古在「NASAだけじゃなく,昨年はESA(欧州宇宙機関)も火星に行きましたね。日本も打ち上げたけれども,残念ながらだめでした。
 火星は,大気が薄く酸素より二酸化炭素が多いんですが,かなり地球に似た天体で,昔から火星人がいるとか言われてきました。最近は,水があれば何らかの生物が存在する可能性があるということで,水を探しているんですね。じつは,土星の衛星タイタンにも水分があるんじゃないかと言われていて,生命がいるかどうかが,かなりの関心事になっています。ただ,人間のような生物がいることにはならないでしょうが。」

── 宇宙への関心というのは,地球外生物という面もあるんですね。

古在「そうですね。いま,太陽以外の恒星の周りの惑星が,ここ10年間で100個以上の見つかっているんです。これは,惑星を直接見たのではありません。
 太陽と木星を考えると,木星の質量は太陽の1000分の1だから,その重心は太陽−木星間の距離の1000:1の場所で,太陽の表面 あたりにくるわけです。木星は秒速13kmで動き,そのために太陽は秒速13mで動く。そこで,恒星からの光をとって,ドップラー効果 を調べて,それが周期的に見られるということから,惑星を見つけるんです。
 それから,惑星が恒星の手前を通ると,惑星の影ができて恒星の明るさが減るという報告もあります。じつは,東京の成蹊高校が8月11日(日本時間)に「すばる望遠鏡」で,恒星の前を惑星が通 過して明るさが減ることを観測したんですよ。成蹊高校は,数十年にわたって毎日,富士山が見えるかどうかを記録しているので有名な学校ですね。」

── すばる望遠鏡は,子どもたちが星空への興味をかき立てるのに役立っていますね。研究としての役割はもちろんですが,教育的な役割もありますね。

古在「高校生が使うのは,おそらく今年が初めてだと思います。じつは,すばる望遠鏡のある場所は標高4200mで空気が薄いですから,16歳以下の人は上がっちゃいけないことになっているんです。だから,小学生や中学生はだめなんですよ。(笑)実際に体に影響があって,子どもを守るための規則だから仕方ないですね。」


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