2005 summer

県立ぐんま天文台
台長 古在 由秀 先生
インタビュー(5)

 直接目でのぞいて観察できるものとしては世界最大級の150cm望遠鏡をもつ県立ぐんま天文台は,1999年7月に 全面オープンしました。
 今回は,開設の経緯や天体の話について,台長の古在由秀先生にお話を伺いました。

(聞き手:編集部 岡本)

 

■ついに見極めがつかない■

── いまの理科教育全般については,どのような考えをもっていますか?

古在由秀先生 (以下,古在)「ぼくが思うに,理科離れと言うけど,高校生なり中学生なり,専門を身つけることをしなくなったんですよ。別 に,大学で何を勉強したいということもなく,ともかく難しい大学に入っている。理科系は,本来は目的をもって行かなくてはならないから,進学率が少なくなっているんだけど,もっと広い意味で,目的意識がなくなったということだと思うんです。
 難しい大学を出て,エリートになるのもいいですが,エリートというのは,本来はもっと勉強をして世の中のために役立とうと思う人ですよ。明治の頃に外国に行かされた人は,本当にものすごく勉強して帰って日本に利益をもたらした。いまは,勉強したことで私財をどう肥やすかということを考えるでしょ。理科だって,そういうことに使われかねない。(笑)
 ぼくは,「ゆとり教育」はいいと思っているけど,教える先生側の問題がありますね。基本的なことをちゃんと教えるのは,自分の得意分野でなければできないですよ。本当は,その先生の得意な分野で生徒に基本的なことを教えれば,ほかにも応用できるんだと思いますが,そのへんは難しいですね。」

── ある専門に秀でるのか,まんべんなく基礎知識を身につけるのか,そのあたりのジレンマが教育論議の焦点になるんでしょうね。最後に,天文の魅力,天文への想いについて,ひと言お願いします。

古在「ぼくは,50年以上,天文学をやってきて,ついに見極めがつかない。だから,やっぱり天文の対象っていうのは,もっと複雑で興味あるものなんですよ。20年前にNASAの探査機が土星のきれいなリングの写 真を撮りましたね。ああいうのを見ると,びっくりするんですよ。『あんなに金を使って,そんなの行かなくたってわかっている』と言えればいいんだけど,(笑)そうじゃなくて,宇宙とか自然っていうのは,ぼくらの想像を超えていますよ。勉強して調べる価値は十分にあります。論理が飛躍するかもしれないけど,公害問題にしても,ちゃんと理解しないでやるから問題が起こるんです。自然科学者は,もっと力を合わせて自然全体を理解する必要があると思います。」

── 土星の輪を一つとっても,人間の考えを超越した自然の仕組みや美しさがあり,超えたものがあるから自然に興味を示して探究するんでしょうね。公害や,地球の複雑な環境システムなどについても,一つ一つの要素をちゃんと見ていくことが必要なんですね。

古在「そうですね。」

── 本日は,貴重なお時間を割いていただき,有り難うございました。


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