江戸の声

江戸東京ライブラリー 25
江戸の声
話されていた言葉を聴く
- 鈴木 丹士郎著
- 四六判 192頁
- 2005年8月 発行
- ISBN 978-4-316-35940-3
- 品切れ
- 読者対象:一般
商品内容
江戸の市中では、どんな言葉がとびかっていたのだろうか。
映画やテレビの時代劇では、いかにももっともらしく登場人物が会話しているが、それらは本当に話されていた言葉なのだろうか。
ところが、従来の江戸時代の言葉について書かれた本は、この種の定番である『浮世風呂』を除けば、信用のできる文献に、話し言葉が記されているものが少ないこともあって、取り上げる研究者も少なく、文語や漢語を中心に解説されたものがほとんどである。
本書は定番『浮世風呂』はもちろん、他の文献においても、文献の中においては珍しい、話し言葉が出てくる部分をくわしく紹介、実際にどんな言葉が話されていたかを探った。特に、既によく知られている町人語より、扱われることが稀な、子どもたちが口にした言葉、女性たちの言葉遣いの特徴、身分に左右された武士の言葉遣い、江戸で流通していた方言などに紙幅を割き、例えば将軍や御三家の会話の言葉遣いが峻別されていたこと、大奥で将軍が自分のことをなんと呼んでいたか(テレビで演じているような「予」ではない)など、新しい発見がある。
体裁においても、会話を改行して引用したり、後に箇条解説した語の引用部分を網かけしたりして、ビジュアル上の工夫を施し、言葉の本として見やすくすることを図った。
目次
1―子どもたちのさざめき
二百年前の幼児語/百七十年前の幼児語/どんなことから幼児語ができるか/「小娘」たちのスケジュール
2―女性たちのかまびすしき話し声
町の女の「お屋敷ことば」/奉公の年齢、成人の年齢/遊ばせことば/女房詞から女中言葉へ/女性の言葉遣いにもとめられたもの/「もじ」言葉など/下層階級の女性たちのことば/気がねや遠慮のない江戸ことば
3―身分がもの言う武士のことば
武士にも使い分けがある/「武士らしい」言葉/自分をさす言葉・相手をさす言葉/武士と町人の間/武士らしい「自分をさす言葉」/大名や上級旗本たちの言葉/将軍や御三家の言葉/大奥で使われた武士の言葉/漢語じたて/漢語じたての背景
4―通じ合う江戸市中の方言
中央語は上方語から江戸語へ/方言の東西区分/江戸時代の方言書/話し言葉の上方方言/話し言葉の上方方言(2)/話し言葉の江戸方言/[コラム]「さかい」「から」論争までの流れ/上方方言と江戸方言における文法の違い