綺堂は語る、半七が走る

江戸東京ライブラリー 22
綺堂は語る、半七が走る
異界都市 江戸東京
- 横山泰子著
- 四六判 196頁
- 2002年12月 発行
- ISBN 978-4-316-35910-6
- 価格 (税込) 1,650円(本体 1,500円+税)
- 読者対象:一般
商品内容
多くの作品を残した岡本綺堂は、筋金入りの怪談好きでした。子ども時代から草双紙のなかの怪談を愛読し、西洋のお化け話に親しんでいたのです。その怪談趣味が作品に反映され、綺堂は江戸の怪談を素材に多くの怪奇小説を書きました。また、西洋の怪奇小説を翻訳し、漢籍を用いた翻案翻訳も試みて幻想的な戯曲も残しました。また一方で、エンターテインメントである捕物帳というジャンルを創始した作家でもありました。その作品は『半七捕物帳』。この短編連作に描き込まれた江戸の風物詩、情緒について高く評価し愛好する人は今も多いのです。
本書では短編や戯曲に扱われた怪談に向き合い、怪談とは一見関係のなさそうな作品でも、怪談の解読にヒントを提供しそうなものは取り上げ、さらには他の時代や外国の(とくに中国の)怪談と比較しながら、まずは、江戸武士の生き残りとして不遇に新時代を過ごした父を持つ綺堂の怪談のキー・コンセプトが「江戸の残党の恨み」であり、『牡丹灯籠』の円朝の語りに魅入られた「聴覚型」の怪談作家として文章は怪異を正確に伝えるものと位置づけます。その上で、『半七捕物帳』には、むしろ怪談物として読む方がおもしろいものが多いと著者は提言し、その数多い事件の中から不思議な事件をとりあげて、その怪奇味の内容をときほぐしていきます。そしてそれが「捕物帳」という新しいエンターテインメントの成立とどういう関わりがあるかを考えるのです。そのために、綺堂が大きな影響を受けた同時代のシャーロック・ホームズ物語(これにも「まだらの紐」に見るような怪異が多い)を比較の対象とし、都市文学という共通性を有しながらも、しかし『半七捕物帳』は、江戸の豊かな自然、濃密な人間関係を描いて独自の世界を創り上げ、それが大衆の江戸への精神的な関わりと結びつくことで読者を獲得していったというのです。
目次
第1章 芸術家の呪い、武士の運命
『修禅寺物語』の世界/日本の呪いの典型/呪いの古道具――猿の仮面/呪いの古道具――笛/芸術と古道具/呪いの古道具――兜/江戸の残党の怨念/呪いの恐ろしさを伝える文章/正確な文章を丁寧に読む
第2章 水の生き物たちの反撃
平家蟹の悲しみ/幻の蟹の絵/動物パニック物と『海亀』/鰻を食べると変事が起こる/食とエロスの怪談/『鯉』をめぐる東京散歩/『鯉』と実説
第3章 怪談を「読む」「聴く」「見る」
怪談物の多様なジャンル/牡丹灯籠の源流と日本化/名人芸と綺堂/中国の原点に戻る――『牡丹灯記』/大坂城の怪談/怪談劇はトテモ難しいケレンを廃す/言葉で訴える怪談劇/怪談を「読む」「聴く」「見る」
第4章 半七親分、怪異を語る
半七と怪談/江戸東京の文学/津の国屋の奥向き/一町に一軒、化け物屋敷/秘密を隠蔽する機能/犯罪は解決する、されど謎は残る/霊を感知する力
第5章 ホームズのロンドン、半七の江戸
ホームズ物語との比較研究/大都会の地誌と風俗/大都会ならではの事件/盛り場と見世物/豊かな自然環境/密度の濃い人間関係/ホームズのロンドン、半七の江戸/江戸へのパスポート/お堀端の暗さを思う
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