教育研究所
№1032「遊学って,おかしい!」
孫が大学生になり,Y県から上京しW大で学んでいる。4月当初はよく「ジージ,バーバ...」と,訪ねてきたが,最近は連絡もない。
そんな時,江戸東京博物館学芸員菅井薫さんが,Y新聞に「上京学生への生活の心得」を寄稿していた。内容は,大橋又四郎編「東京遊學案内・改正(改訂)增補第三十版」東京少年園發行(明治31年(1898年)7月)を紹介し,地方から勉学に上京する学生に対して,次のようなことを留意するよう啓発していたそうである。
★都会は誘惑が多いので,誘惑に負けてふしだらな生活を送ることがないようにすること。
★人混みの中のスリに注意するなど,旅行中の身辺警戒に注意すること。
★都会には病原菌が多いので衛生に注意すること。
★都会での運動不足を補うため,休暇には郊外で英気を養うこと。 等々。
今でも通用する内容で,孫にこの記事を熟読させようと思っているが,連絡がない。ところで,平成10年頃,T区立N小学校に勤務していた。体育館の正面右側の大時計の下に,大きな額が掲げてあり「遊学」と大きく墨書されていた。中国から訪れた教員研修団の先生方がこの「遊学」を見て,「どういう意味か?」と質問された。
「地方から勉強するために都会に出てくることです。国内留学ということです」と,説明したが,中国には「遊」と「学」を組み合わせた「遊学」という言葉は存在せず,全く分かって貰えなかったという思い出がある。「遊学」は,「休閑」に近い意味にとられたのかなとも思ったが,校内の見学を優先し,それ以上話題にすることはなかった。
今では,「内地留学(註:地方→都会,都会→地方の両方の意味がある)」という言葉が普通に使われているが,「遊学(註:こちらは使われていない)」と殆ど同義であろう。(H&M)
(2019年8月7日)