教育研究所
№1049「成人式」
今年の新成人は124万人で,昨年より2万人の増だそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大のため,成人式を中止したり延期したりする自治体も多かったが,感染防止を徹底して開催したところもあった。
東日本大震災から今年で10年になる。今年,成人式を迎える若者は震災当時10歳,小学校4年生だった。被災した自治体の成人式で,新成人の誓いの言葉の中に「支えられる人から支える人になりたい」という言葉があった。他の新成人へのインタビューでも「今度は自分たちがこの町のために働きたい」と話す人が多かった。自分たちが小学生の時に被災し,苦しく悲しい経験をする中で,さまざまな人に支えてもらいながら成長し,成人式を迎えられた感謝と喜び,そしてこれからの決意が感じられる素晴らしい言葉だった。
また,ある自治体では新成人を委員として実行委員会方式で成人式の開催の計画と運営を計画していたそうである。しかし,成人式当日,役所に匿名で成人式への参加予定の新成人の中に新型コロナの濃厚接触者がいるという情報提供があったという。実行委員会ではLINEで成人式参加予定者に,濃厚接触者は実行委員会に連絡をするように呼び掛けたが反応がなかったのだそうだ。実行委員会では「命の大切さ」を考え,成人式を中止したという。自治体の担当者はインタビューで,涙声でこの経緯を説明していた。実行委員の新成人は成人式に向けて全力で思い出に残る成人式にするための計画を立て準備をしてきたことだろう。「もしかしたら,これはいたずらかもしれない。」という思いもあったかもしれない。決定に至るまでにはさまざまな思いが交錯したにちがいない。その上で,断腸の思いで成人式の中止を決断したのだろう。まさに大人としての判断をしたと思う。
他の自治体の成人式では式後に仲間数人と飲みに行く姿や騒ぐ姿も映し出されたが,それは新成人全体の中の少数だと思う。多くの新成人は自分が今ある喜びと感謝,そして,これからの人生への決意を新たにしてこれからの一歩を踏み出そうとしているのだと思う。コロナ禍の今,私たち大人は力強い仲間を得た。新たな仲間に大きなエールを送りたい。(A.O)
(2021年1月22日)