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教育研究所

№1050「提出締め切り」

 大学で授業を担当している。
 今年度は,新型コロナウイルス感染拡大防止の関係で,私の授業は100%オンラインである。
 オンライン授業の場合,「教員から学生への課題の配信⇒学生から教員への課題に対する解答の返信⇒教員から学生への解答に対するフィードバック」で1回の授業が完結する。1科目について15回これを繰り返す。
 大学からは,課題を出す際には,配信日も含め5日後を課題の提出締め切り日に設定するよう指示されている。
 例えば月曜日は同じ授業を2コマ(計,約120人)担当しているので,締め切りはその週の金曜日の23:59になる。

 私は当初,120名のうち,月曜日から木曜日までそれぞれ20名くらい提出があり,最終日の金曜日に40名くらいから提出があるだろう。フィードバックもそれくらいなら楽でいいと思っていた。
 ところが私の良心的な読みは見事に外れた。6割程度が締め切り日の23:00以降の提出というのが実態である。そして,23:56頃からは課題の提出を知らせるスマホが鳴りっぱなし状態になる。他の曜日の授業も同様の傾向である。

 このような状況に,学生たちの私に対する嫌がらせかと不安になり,他の教員に話を聞いてみたが,やはりほぼ同様の状況だった。ある教員は,早めに提出した場合はボーナス点を加点すると言っていたが,「それは違う!」と思い,採用していない。
 できるだけ,提出のあったその日のうちにフィードバックしてしまいたいと思うので,最終的にフィードバックが終了するのは毎週土曜日の午前3時頃になる。
 学生に,この窮地を伝え,提出を早くするよう依頼しようかと思ったことも1度や2度ではない。しかし,「待てよ!!」と思い直す。「提出締め切り」が決まっているのであるから,それまでに提出すればよいのであって,早く出せというのはこちらの都合に過ぎないではないかと。

 毎回,早め早めに出す学生はいつも決まっているが少数はいる。締め切りギリギリの学生はいつもギリギリである。自分もそうだったのだから,学生たちも仕方がない,社会人になったらちゃんとやるだろうから,ここは私が我慢すればよい,大目に見ようと思っていた。
 ところが,過日このようなことがあった。以前,私が担当した学生を知り合いの校長先生に臨時教員として受け入れてもらった。「ちゃんとやっているか?」とその校長先生に聞いたところ,「提出物がなかなか出て来ない」「時間にルーズ」という話だった。
 確かにこの学生は人はよいが,学生時代から「提出物は締め切りギリギリ」「連絡をしてもなかなか返信がない」という状況だった。
 「社会人になったら何とかするだろう」とは,ならなかったのである。学生時代,だらしがなければ,社会人になってもだらしがないのは,多くの場合は変わらないということである。

 これまでよい教員ぶって,「締め切りがあるのだから,締め切りまでに出せばよい」と言ってきたが,間違っているのかも知れないと思い始めた。学生の時から,「締め切り日はあっても,ちゃんと余裕をもって提出のするのが常識だ!」と厳しく指導することが社会人になった時のことを考えると必要なのかも知れない。

 ただ,それであれば何のための「提出締め切り」なのだろうとも思う。親切心で提出期間に幅をもたせているのに,割り切った考え方をする学生からは「それであれば,提出日時を決めてください」と言われそうである。

 皆さんは,どのように考えるだろうか。そして,子供たちにどのように伝え,指導しているだろうか。そして,何より皆さん自身はどうだろうか。
 ちなみに私は,書類等の提出物は依頼のあったその日に作成し提出するようにしている。また,原稿等についても十分に提出期日まで余裕をもたせて提出している。どうせやるなら,早めに片づけていけば,仕事がたまることも処理することも忘れることがないからである。依頼主に迷惑をかけることもない。

 ただ,そんな私も「まだ,未提出なのですが...」と担当者から催促を受けることがある。その時は,その原稿の依頼や文書の提出自体,私が完全に忘れてしまっているときである。
 最近,このような催促を受けることが多くなってきており,別の心配をしなくてはならないと考えている今日この頃である。(S.E)

(2021年2月5日)