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№1053「"今ならお得!"のメディアリテラシー」

 久しぶりに商店街で梨を五つ買った。"今ならお得!"と書いてあり,確かに1,000円で200円のおつりをもらったので,少しお得な気分になった。そこで,ふと不安に思ったのは,「本当に安かったのか? 五つも食べきれるか?」といったこともあるが,こうして『教室の風』に書いているのであるから,もちろん「子どもたちの教育について」である。

 それは,先生方がGIGAスクール構想の実現やICT活用能力の育成に注力する中で,メディアリテラシーの指導はどうであろうか,ということである。「メディアリテラシー」については,ユネスコやEU,我が国の総務省等がそれぞれに幅広い概念として示しているが,冒頭のように日常的なものも含めた「情報の信頼性を判断する力」の指導に着目すると,従前と比べてあまり意識されない状況が生じているように思われる。

 さまざまな媒体から発信される情報の信頼性の判断は,情報の内容吟味や適切な選択・活用の基となる極めて重要なものである。子どもたちの日常生活においても,テレビ番組やコミック等に加え,インターネットやSNS等からの情報に接する機会は急速に増加しており,誹謗中傷やいじめ,犯罪被害等の問題も深刻化している。発信時も含めた「情報の信頼性を判断する力」の指導は,さらに重要性を増している。

 現行学習指導要領においても,総則における「情報モラル」の解説で,「情報には誤ったものや危険なものがあることを考えさせる学習活動」の必要性が示されている。また,文部科学省が例示する「情報モラル指導モデルカリキュラム表」にも,情報の「誤り」や「正確さ」の判断,情報の「信頼性の吟味」や「適切な対応」などの指導が系統的に示されている。

 各学校においても,これらを踏まえた指導や,従来のNIE(教育に新聞を)等の取組は行われている。しかし,各教科等の目標及び内容の指導を行いつつ,幅広い内容の「情報活用能力(情報モラルを含む)」を育成する中で,その一部である「情報の信頼性を判断する力」だけを重点的に取り上げ,系統的に指導することは難しい。

 では,どのような指導が可能であろうか。
 一例として,国語科の「情報の扱い方に関する事項」を中心とした教科等横断的な指導が考えられる。この指導事項は,現行学習指導要領の国語科の〔知識及び技能〕に新設されたものであり,「情報の信頼性を判断する力」に関しては,以下の内容が各学年段階の指導事項として系統的に示されている。

・小学校第1学年及び第2学年:「共通,相違」「事柄の順序」など
・ 〃 第3学年及び第4学年:「考えとそれを支える理由や事例」「出典の示し方」など
・ 〃 第5学年及び第6学年:「原因と結果」「語句と語句との関係」など
・中学校第1学年:「原因と結果」「意見と根拠」「出典の示し方」など
・ 〃 第2学年:「意見と根拠」「具体と抽象」など
・ 〃 第3学年:「具体と抽象」「情報の信頼性の確かめ方」など
・高等学校「現代の国語」:「主張と論拠」「個別と一般」「妥当性や信頼性の吟味」など
 これらの観点で情報を見直したとき,齟齬や不足がある場合には,情報の信頼性に問題があるということである。

 国語科においては,これらの〔知識及び技能〕(2)の指導事項を,A「話すこと・聞くこと」,B「書くこと」,C「読むこと」の単元等において「情報の信頼性を判断する力」に着目して指導することで,情報の発信と受信の両方に対応した力として系統的に指導できると考える。

 また,他の教科等においては,「なぜ」という発問を意識した指導が考えられる。情報の信頼性の判断において,特に内容の信頼性を判断する際には,「考えとそれを支える理由」や「意見と根拠」が重要だからである。また,解答や発表の際に理由や根拠を求めることで,結論に至る思考・判断の過程を表現させることができ,さらに論理的な思考力の育成にもつながる利点もある。この指導は,小学校第3学年以上であれば,どの教科等でも可能であるが,単元や活動等によっては,「出典」や複数情報の「共通,相違」等に着目した情報の吟味など,国語科の「情報の扱い方に関する事項」を踏まえた教科等横断的な指導がさまざまに工夫できる。

 以上は,ICT活用が推進される今だからこそ必要な指導の一例であるが,今なら,必要性を踏まえた効果的な指導が可能になるということでもある。

 なお,蛇足だが,梨は五つともおいしくいただいた。結果的に"今ならお得!"であった。(K.M)

(2021年10月19日)