教育研究所
№1055「部活動」
大学1年生の教職科目の授業で学生に、「教員採用選考に合格し、最初に赴任した学校の校長先生から、全く専門外の陸上部の顧問をよろしくと言われたらどうするか」と質問する。
すると、
・ 専門外のことはできないので断る。
・ 〇〇を大学で専門にやってきたので〇〇部の顧問をやらせてもらえるように伝える。
・ 〇〇部の指導がしたくて教員になったで、そこを理解してもらうように説得する。
と半数以上の学生が答える。一方、少数だが、
・ 校長先生の指示に従う。
・ 陸上は小学校、中学校、高等学校の授業でしかやったことがないが、専門の方から技術を学びできる限りがんばりたい。
と答える学生もいる。
なかには
・ 今、外部指導員を導入する学校も多いと聞いているので、技術指導はその方に依頼し、自分は生徒たちと一緒に活動しながら顧問として見守りたい。
と答える学生もいる。
同じことを4年生の教職科目の授業で学生に質問すると、ほとんどの学生は、
・ 承知しました。精一杯努めさせていただきます。
と答える。
4年生になれば、教員採用選考に合格したいという気持ちも強くなるし、採用されることを最優先に考えるので、このように答えるのは当然なのかもしれない。
ただ、部活動について一部の学生は、
・ 自分がこれまで専門にやってきた部活であれば、是非顧問をやりたい。
と思っている反面、多くの学生は
・ 生徒とのつながりを大切にしたいので顧問はやりたいとは思うが、負担感はある。
・ できたら顧問をやりたくない。
と思っている。
そして、このような思いの学生たちが教員になっている。
先日、ある中学校の校長先生と話をする機会があった。
その際、この学校のある自治体では、近い将来、部活動を学校から切り離し、教育委員会が主体となって指導者を派遣する制度を取り入れる。ただ、教員が部活動の指導を行いたい場合は別に手当てを支給するという。そこで、その校長先生が新しい制度のもとで部活動指導をしたいかどうかの調査をしたところ、顧問として指導したいと申し出た教員は2名に過ぎなかったという。
私は高等学校まで野球をやっていたが、中学校、高等学校の教員時代、野球部の顧問をやったのは2年間しかなかった。全く専門外のサッカー部、バスケット部、バレーボール部、硬式テニス部の顧問を務めてきた。やはり、やらなくてよいのであれば、やりたくなかった。放課後は学級経営や学校行事を通して生徒とかかわりたいと思っていた。
私の経験上、大学まで自分が専門にやってきたことを、部活動で指導できる教員はごくごく少数だった。ほとんどの教員は全く専門外の部活動の指導をしていた。
きっと、私と同じ思いの教員が多いのが実態ではないかと思う。
先日、教員の働き方改革の一環として「地域部活動」という考え方で対応をしようとしている自治体のことが報じられていたが、今後、ますますこのような動きは加速されると思われる。
部活動の課題については、私が教師になった40年も前から「社会体育への移行」などと言われてきた。しかし、あまりその当時から様子は変わっていない。
ただ、ここに来て確実に動きが出てきている。
私が冒頭で学生に投げかけた「全く専門外の陸上部の顧問を依頼されたら・・・」との質問がナンセンスと言われる時代が一日でも早くやって来ることを願わずにはいられない。(S.E)
(2022年1月5日)