教育研究所
No.376 「ラズベリーパイとスクラッチ(その3)<全3回>」(2014年7月1日)
実は,「ラズベリーパイ」は小さなパーソナルコンピューター。
大きさは,たばこの箱より一回り大きい手のひらサイズ。
値段は4,000円弱。市販のパソコンの,衣服を着せていない本物である。
これに,ディスプレイ,キーボード,スピーカー等の周辺機器は別にそろえて使う。
ディスプレイは,地デジ対応の最近のテレビで代用できるというから,それらをそろえて使えるようにしてもせいぜい1万円程度。
30数年前を思えば隔世の感がある。
なぜ,安いのか。
子供たちでも,ちょっとがんばれば手に入れられる,
教育用に開発されたPCだからである。近年の,全て出来合いの,提供されたソフトを使うだけの最近のパソコンと違い,原点に帰って,自分でプログラムを組んでいろいろなことをして遊び尽くそうという意図のもとに作られたという。
特に宣伝するわけではないから企業名は特に書かないが,開発の意図は,提供されたアプリの消費者でいるより,もっと創造性を発揮して作る喜びを知ろうよ,ということらしい。
プログラムさえできれば,アニメだろうが,ゲームだろうが,ロボット操作だろうがお手の物だということで,世界的に購入者が広がっているのだそうだ。
「スクラッチ」は,そのプログラム言語である。
プログラムといえば,小難しい命令・指示の文字列を特殊な言語で打ち込んでいくすがたを思い浮かべるが,こちらは,命令・指示等が積み木ブロック化されていて,それを組み合わせるだけという視覚化されたものである。
本当にそんなに簡単でおもしろいものなのか?
先日,5年生の子どもたちが,これらを使って,同訓異字の問題を作り,回答者が答えを入力すると正誤を判断して表示するというプログラムを作っていくのを参観した。
初めての挑戦だというが見よう見まねで作れてしまうのだ。
単なるアプリ消費者ではなく,プログラムするという,開発者側に身をおいて,論理の展開を学ぶ教具となるのかもしれない。
これは,教える側,教師にとってどうなのか。
若い頃,教室で,ノート指導に活用できるスタンプ式簡易印刷機を手作りして,授業中に活用し,まあまあの成果を上げた
今や,機器の進化は,教師の手作り教具も減衰させているのかもしれない。子供たちの手作り問題プログラムを見ながら,教師がみるみる追い越されていく幻像を思い浮かべ,そこに必要な不易の精神は何か,あれこれと考えさせられた。(H・I)
(2014年7月1日)