教育研究所
No.367 「時代考証」(2014年03月04日)
毎朝,老妻(妻でも良いのだが事実を書くことにした)が連続ドラマ(タイトルが思い出せない)を見ている。
戦後(今では,この表現ではいつのことか分からない人のほうが多いかもしれない。
正確に言えば,日本が第二次世界大戦で敗戦した昭和20(1945)年8月15日以後を戦後という。
もう「戦後」という言葉自体が古語辞典の仲間入りをする言葉かもしれない。)間もない頃の話のようだが,どうもしっくり来ないところがある。時代考証をしっかりやってほしいものである。
<その1>
日本国中が,もっともっと貧しい時代だった。
それなのに,家にいるときも小奇麗な着物を普段着にしている。
あの頃は,普段着とよそ行きがはっきりしていて,特別なところへ出かける以外は,ヨレヨレのものを着ているのが普通だった。
私は,戦後間もない頃に子ども時代を過ごしたので,体験を根拠として大きな違和感を覚える。
そういえば,王様が登場する韓流ドラマでも,王族と使用人,一般庶民の服装が,色や装飾品が異なるだけで,結構いい身なりをしていて,話としては面白いけれど,御国の人々が見ていると同じようなことを感じるのだろうかと思う。
<その2>
子どもの頃,おふくろが糠味噌を漬けてくれた。
他のものはおいしく食べたが,なぜか茄子が苦手だった。
そのせいか,息子は茄子が大嫌いである。
しかし,今では,老妻の漬ける酸っぱくしたくらい漬物が好きである。
不思議に茄子も美味しく食べられるようになった。歳のせいかもしれない。
前置きが長くなった。
朝ドラの中に長男のお嫁さんが出てくる。
このお嫁さんが姑との関係であれこれあって苦労(あっけらかんとしている表情から悩んではいないようである)している。
このお嫁さんが糠味噌をつけている場面が良く出てくる。
その所作が私には気に入らない。
着物姿で,袖を伸ばしたまま糠床を捏ねて(捏ねるのは空気と触れさせて大事なことである)いるのである。
袖をまくるか,襷をかけて袖を短くするのが常識というもので,糠で汚れたら着物は丸洗いできないので困るはずである。
そんなことをぶつぶついっている私の傍で,老妻は,「そんな細かいこと気にしていたらドラマがつまらなくなるから黙っていてよ」と。
<その3>
あるとき,このことを投書したら,広報担当者から「私もそう思います。担当に伝えておきます」と丁寧に回答があった。
私の指摘に,老妻と同じ感想をもったに違いない。(H・K)