教育研究所
No.366 「スクールソーシャルワーク」(2014年02月24日)
先日,日本社会事業大学大学院特任教授の山下英三郎先生から話を聞く機会を得た。
山下先生は,30年以上も前からスクールソーシャルワーカーとして,行動上の問題を抱える子どもたちや不登校・引きこもりの子どもたちとその家族を支援する活動を続けている。
私たち教師も,これらの子どもたちへの対応で悩んだり苦慮する場合が多い。
スクールソーシャルワークについての原点と思えるお話だったのでいくつかを紹介したい。
スクールソーシャルワークとはいったいどのようなことをいうのか。
それは,「子どもたちが抱えている様々な問題に対して,学校をベースに,精神的支援を重視した支援システムのことで,その具体的な対応は,子どもの人権の尊重,ひいては人間尊重を最も重要な視点に置き,自己の置かれた立場や状況で悩んでいる子どもたちの,これからの可能性と自立について自信を持たせ,子どもたち自身がその状況から脱し,未来ある生活状況を取り戻せるようにするための支援である。」と私なりに解釈している。
ソーシャルワーカーとして大切な視点は,どのような状況に置かれているとしても個々の子どもの持っている能力や可能性を認め,気付いてあげられることである。
また,子どもたちの示す多様な言動の全てに意味があることを理解することが求められていることでもある。
たとえ乱暴で自己否定的な行動であったとしても,それは子ども自身の安全を保つために発信する防衛反応である場合が多いという。
嘘をついたり,逃げたり,他人に責任をなすりつけたりすることもある。
それらは,子どもたちが置かれている状況から排出される心理的不安であることを理解しなければソーシャルワークとしての糸口が見つからない。
つまり,肯定的に子どもの心理状況を理解することからソーシャルワーカーの仕事が始まるのだという。
このことを踏まえ,スクールソーシャルワーカーは,子どもたちの問題行動や欠点からその子を見つめるのではなく,「子どもたちが持っている能力や状況を積極的に受け止め,認めることが信頼関係を生む」ということを心掛けているという。
山下先生は,子どもたちが自己の「生きる力」に自信を持ち,その意欲を最大限に発揮できるように支援していくことを目標にしている。
また,個々の子どもが,家族や学校(友だち・教師・学級・部活動等)で自己の思いや願いを自然に伝えられるよう環境の適合状態をつくることが大切であると力説されていたことが、とても印象的であった。
小中学生の数が減少しているにも関わらず,不登校や課題を抱える子どもが増加している。私たちが学ぶべきことは多い。(H・H)