教育研究所
No.362 「伝統的な言語文化に親しむ」(2013年12月12日)
年間70校ぐらいの研究会にお邪魔するが,最近は,もごもご読みかぼそぼそ読みが高学年児童の音読の常態になっていて,はつらつとした学習音声を聞くことが少ない。
ところが,久しぶりに6年生の児童が腹から声を出す姿に出会った。
聞くと,普段は,やはりこんな読みは見られないという。
今回,そのような読みになったのは,<講談を演じる>という敬老招待の目的があるからだそうである。
「伝統的な言語文化に親しむ」学習のために,「明治以降の文語調の文章」を探して「講談」に出会い,幸い,アマチュアの講談師に出会った。
その,生の語り(本読み)を聞いて,圧倒され,自分たちも読みたいと取り組んだそうだ。
教師が探し出してきた一休禅師のエピソードを分担して,練習に入ったそうだが,だんだん,目が文字追いから離れ,調子をつかみ,顔の向きを変えて登場人物を演じ分けるようになってきたという。
講談の先生に聞くと,「型」があるからむしろ演じやすい,張り扇で切りつなぎや強調ができて,リズム感が快くなってくるのだという。
たしかに,友達の工夫を認め合い,アドバイスし合って,音読を愉しんでいる様子が随所に見て取れた。
「心情の表現読み」「短歌の朗詠」「古典の鑑賞読み」など,教師は教材の質に,つい「高尚さ」を求めるが,<親しむ>とは,耳や口のなじむ体験を思い切り楽しむことだろう。
昭和半ばまで人気を博した講談は,近年,芸能の中でもあまり顧みられない芸能になっているが,敬老招待の出し物という目的を得て,この教室でよみがえった。
子どもの夢中を引き出すシンプルさが見直されていいと思った次第である。(H.I)
2013年の「教室の風」は,今回が最終号です。
次回は,1月中旬に配信の予定です。
読者の皆様には,よい新年をお迎えください。今後とも,よろしくご愛読のほどお願い申し上げます。