教育研究所
No.359 「おもてなし」(2013年10月09日)
2020年の東京オリンピックが現実のものとなった。
その招致プレゼンで紹介された日本の文化「おもてなし」が話題になっている。
電車などの優先席を若者が占領する国はおかしいのではないかと,A新聞の声欄に読者の意見が寄せられていた。
おなかを突き出した妊婦に,「優先席」であるはずの席を譲るどころか,前の席が空くと同時に若者がするりと座ってしまったというのである。
おもてなしとは,特別なことをするのではなく,弱い者をかばい,いたわる優しさが原点だと提言していた。
全くその通りだと思った。
私の経験でも,多摩モノレールの立川から多摩センター間は若者の乗り降りが多い。
あるとき,お年寄りが降りようとしたら,我先にと空席をめがけて乗車してくる若者に押し返されて転びそうになっていた。
「何てことだ,乗客が降りてから乗ることくらいできないのですか」と抗議するも,誰一人見向きもしなかった。
そういえば,東西線の駅でも,同じようなことを経験したことがある。
日本テレビで,古本屋を舞台にした心温まるドラマが放送されていた。
そのドラマの中に「小学生が3人並んで向こうから進んでくる。こちら側からは,高齢のおばあさんが歩いていく。
しかし,子どもたちはそのまま並んで直進し,おばあさんが,はじに押しやられるようにして歩いている」という場面があった。
私が,演出者だったら,直ちにNGを出して,はしの小学生の女の子をよけさせ,おばあさんが歩きやすくするだろうなと思った。
江戸時代末期から明治時代に日本を訪れた外国人が,「日本人は,生活はさほど豊かではないが,たいていの人は読み書きができ,知的好奇心が旺盛である。
子どもを大切にし,他人に親切である」と,書いてあるのを読んだことがある。
「家庭で子どもの育児をどのように進めるか」「学校で子どもの心と行動をどのように育てるか」「地域社会で大人が子どものモデルとしてどのように振る舞うか」のヒントにしたい半面教材(反面教師)である。(H・K)