教育研究所
No.356 四者悟入(2013年09月10日)
8月5日に行われた「第42回教育展望セミナー」(一般財団法人教育調査研究所)で,遠藤章先生(東京農工大学特別名誉教授・(株)バイオファーム研究所所長)が,「ぼくは科学者になりたかった」と題して講演をされた。
ノーベル賞の候補者になるような世界的な科学者である遠藤先生は,講演の中で「私は,子どものころから野口英世のような科学者になりたかった。
私は家庭の都合で,高校卒業後は,就職するつもりだったが,担任の先生と校長先生が大学へ進学するように強く勧めてくれ,両親を説き伏せてくれた。
そして大学時代に,ペニシリンを発見したフレミングの伝記を読んで将来の目標が決まった。
高校の先生方のお蔭で,今日の私がある。
会場の先生方も是非,子どもたちに夢と希望を与える先生になって欲しい」と,話されました。
私は,講演を聞きながら,現職時代に尊敬する校長先生が,「教師は,『四者悟入』の心境が大切である」と,私たちに説かれていたことを思い出した。
「四者とは,学者,医者,役者,易者」のことである。
「学者」:学問に通じることはもちろん,新しい知識や技能を習得し,教科等の指導力の向上と力量を高めること。
「医者」:子どもの心身の成長発達・健康についての正しい理解や状況を判断すること。
「役者」:子どもを引きつける演技力を発揮し,ときには自分の意を伝えるために立ち振る舞うこと。
「易者」:子どもの適正な進路を指導すること,子ども自身の気付いていない才能や能力を見出し将来を見通して,一人ひとりの人生の良き進路に向けてアドバイスをすること。
そして,教師は,その精神をよく理解し,咀嚼して教師としての力量を高める努力をしなさいと諭されたのだと,私は理解している。
子どもたちが安心・安全して生活できる学校,いじめや体罰のない学校が求められている今日,私自身教育関係の仕事に携わる者の一人として,「師との出会い」の大切さと「教師の『四者悟入』に通じる専門家としての教師を目指して研鑽することの重要さを改めて学ぶことができた講演であった。(H.H)