教育研究所
No.353夏季移動教室の野外学習(2013年07月10日)
夏休みを前にして多くの学校では,移動教室や林間学校等の準備をしておられることと思います。
子どもたちは,友達との願っても無い楽しい時間ですから,大変楽しみにしていることでしょう。
移動教室の学習内容は,各学校で工夫され充実した内容を予定されておられることと思います。
ここに,自然を対象にした理科学習の一つの例を挙げたいと思いますので参考にしてください。
○理科6学年「土地の作りの学習」の例
日頃,理科の学習で実施することが難しい内容の一つに,6学年の「土地の作り」の学習があります。
土地の作りを実際に調べるためには,地表面の下を見る必要がありますが,なかなか適当な場所が見つかりません。
工事現場の掘削場所や坂の側面が見ることができるとよいのですが,適切な場所が少なく苦労します。
やむなく,学校建築時のボーリング資料を自校と近隣の学校から拝借して,地層と地層の間の層を推論で埋めて学習を進めるという苦肉の策を工夫している学校もあります。
ところが,移動教室で山地や海岸に出かけますと,崖や切通し,露頭などでコンクリート等の被覆をかぶせない,生の「地層」を見ることができます。
「土地の作り」の学習を進めるには,大変適切な場所であります。
もし,安全な場所であり,しかも3日間の内に1~2時間の時間が取れましたら,「地層」を観察し,その記録と砂や小石などの現物を学校に持ち帰り,学習を進めてはいかがでしょうか。
「地層」の学習のねらいは,土地を作っている物質は何か,その物質はどのように層を形成しているか,層はどの範囲に広がっているか,地層はどこでどのようにしてできるか等の問いを解決することにあります。
現地の「地層」の調べ方は,はじめに崖の10~20m手前から崖全体を観察し記録します。
崖全体の幅を巻尺で測り,高さは目見当で割出します。
次に,崖はいくつの層からできているか概観します。
横に入っている線の数や重なっている色の異なる層の数から見当をつけます。
次に,各層がどんな物質でできているか類推します。
例えば,1番上の層は海岸にあるような明るい茶色でしたら「砂の層」ではないか,2番目の層は小石が混じっているように見えるので,「砂と小石が混じった層」ではないか,3番目の層は灰色で粒が見えないほど細かそうなので「粘土の層」ではないか等,予想を立てます。
次に,安全を確かめてから崖に近寄り手で触ったり,シャベルで削ったりして遠くから観察した予想を確かめる学習をします。
ただ,高い場所の地層については,直接手で触ることは難しいので,目で観察した範囲で判断します。
砂の層,砂と小石の混じった層,粘土の層等であることを確かめた後,それぞれの層から取った砂,砂と小石,粘土等を別々のビニル袋に入れて学校へ持ち帰ります。
この資料は,帰校後それぞれを詳しく調べるためのものです。
200~300mぐらいの範囲で同じような崖があれば確認し,その間の草木に覆われている所は同じ地層が続いていることを推論します。
帰校後,持参した砂や小石,粘土などを分析し,川や海にある砂や丸い小石であること,粘土の中に貝や魚骨の化石があれば,昔,この土地は海か湖の底でできたのではないかと推論しながら学習を進めます。
楽しく充実した移動教室や林間学校・臨海学校になりますことをお祈りいたします。(Y・H)