教育研究所
No.348サクラ前線(2013年04月24日)
サクラの花見と言えば全国的に「ソメイヨシノ」がその代表的な対象です。
気象庁が発表する「サクラ前線」も,ソメイヨシノの開花前線を指しています。
3月に日本列島の西南端からスタートして,毎日北東に向かって前進し5月中・下旬に北海道の稚内を通過していきます。
現在(5月上旬)は東北各地を前進中ということで,岩手県や秋田県,青森県でソメイヨシノの開花を楽しんでいることと思います。
ソメイヨシノは江戸時代の終わり頃,江戸の染井村(現在の東京都豊島区)の植木屋さんが売り出して広まったという説があります。
その起源についても諸説ありますが,現在は伊豆半島と七島に自生するオオシマザクラと江戸でよく栽培されていたエドヒガンの雑種が,さらにオオシマザクラと交雑してできたのではないかと考えられています。
ソメイヨシノがまだない頃の花見は,どんなサクラを見ていたのでしょうか。
室町時代以前は,植栽されたサクラではなく,主として山地に自生するサクラを見ていました。
平安時代以来,最も有名な花見の場所は奈良県の吉野でしたが,主としてヤマザクラを見ていました。
関東地方でもヤマザクラや海岸沿いのオオシマザクラ等を見ていたことでしょう。
山地のヤマザクラの開花は,また春の田畑の耕作開始の目安でもありました。
東北地方ではヤマザクラではなく,オオヤマザクラやカスミザクラを見ていたことでしょう。
江戸時代になると人工的にヤエザクラ等の栽培品種がつくられ,庭や川沿いや町中に植えられて観賞されるようになりました。
それでも,日本各地の我々の先祖の方々は,地元の山々に自然状態で生育しているサクラを楽しんでいたものと思います。
さて「サクラ前線」に戻りますが,上のほかにもう一つの「サクラ前線」があります。
海岸から山地や亜高山に向かって登っていく「サクラ前線」です。
関東地方の例では,2月開花の海岸沿いの「カワズザクラ」「アタミザクラ」等から始まり,3月開花の平地や丘陵の「オオシマザクラ」「ソメイヨシノ」等,4月開花の山地の「ヤマザクラ」「オオヤマザクラ」「カスミザクラ」等,5月開花の亜高山の「ミヤマザクラ」「タカネザクラ」等の開花前線です。
海抜高度を上げるごとに異なる種類のサクラが,時間に差を付けて開花しやがて山頂に達します。
5月の学校では,ソメイヨシノ等はとうに終わっていますので,ヤエザクラ等(サトザクラ)を学習に活用するとよいでしょう。
葉の柄の部分を見ると,丸い蜜腺から蜜が出ているのが見られるかもしれません。(Y・H)