教育研究所
No.339 「支え合うこと」ということ(2012年11月07日)
「支え合う」ということは,「支えること」と「支えられること」から成り立っている。
しかし,「支えること」と「支えられること」はどちらか一方的なものではない。
支える側に回ったり,支えられる側に回ったりして,自然に支え合って生活している。
最近「最強のふたり」というフランス映画を見た。
見終わって,心が温かくなり,幸せな気分を味わった。
パラグライダーの不慮の事故で半身不随になった大富豪とそれを介護するスラム育ちのアフリカの青年との実話を元にした話である。
障害者と介護人というと,「支える人」と「支えられる人」に一方的に分かれるように思いがちである。
この映画では,そんなことはみじんも感じられない。
障害者についての常識や偏見から自由な青年は,ずけずけものを言い,大富豪をひとりの人間として扱い,できることを何でもやらせようとする。
年齢も,環境も,好みも違う。
しかし,ふたりは,いろんなことを愉快に一緒に経験する中で,お互いを認め合い,なくてはならない存在になっていく。
お互いに「支え合って」いく。
タイトルの通り何をするにも「最強」になっていく。
こんな関係を見て,人間って本当にすてきだなと感激した。
教室での学びも,子どもたち同士の「支え合い」があるかないかでは,学びの質も,成果も大きく違ってくる。
私は,中学校で,英語の授業に長年携わってきたが,同じ学習(指導)内容を同じ学習(指導)方法で進めても学級の集団としての質によって結果は大きく違ってくる。
生徒に形成される科学的な認知活動の研究に力を入れることと同様に,支え合い,学び合いの研究をすることはとても重要である。
学校,学級という場での支え合い,学び合いができると,子どもたちは「最強の学ぶ仲間たち」になることができる。
今年,8月に行われた教育展望セミナー(一般財団法人教育調査研究所主催)の中学校部会で,茨城県牛久市立下根中学校から「学び合い」についてのすばらしい実践提案があった。
研究テーマは,「一人一人の生徒の対話のある学びを通した学力の育成」~学びの共同体の学校作りの中で~であった。
それは,集団の学びを通して,「共感力」や「自己肯定感」や「集団参加能力」といったものが育成され,支持的な学習集団が学力の形成に大きく影響する。
そして,指導方法として小集団での活動を多く取り入れることにより,子ども同士の雑然とした対話の中には「わからない」「できない」が自然に出てきて,「どこが分からないのか」「なぜ分からないのか」を明らかになる。
その徹底した学び合いの中で,言語活動が活発になり,問題解決が図られたと報告された。
その結果,子どもたちの学力は大きく上がったということである。
下根中学校では,学校の組織目標として,「日々の授業を通して互いに学び合える学習集団を作る」とし,学校全体で取り組んでいるという。
さらにこの取り組みは,牛久市内の全小・中学校に波及しどの学年でも,どの教科でも成果を上げているという。
「最強の学ぶ仲間たち」の報告に感銘を受けた。(K・T)