教育研究所
No.338 叱られながら成長する子どもたち(2012年10月24日)
社会の一員として生活する上で,ルールやマナーを守らなかったり,我慢ができない若者が増えたと言われています。
「欲しいものがあっても待てる,人に譲れる」「悔しいことや悲しいことに対しての感情を抑えることができる」など,自分自身の行動をコントロールする自律・自制の心の大切さを理解することが,子どもたちにも求められています。
今年の8月に開催された(一般財団法人)教育調査研究所主催の「第41回教育展望セミナー」―岐路に立つ教育の未来を考える―でのパネルディスカッションで,京都大学客員准教授であり,投資家の瀧本哲史先生は,「資本主義社会が高度化し,ますます不透明なものといわれている社会では,私たちは,かなり厳しい競争にさらされることが避けられなくなる。
生きていくためには,少しぐらいのことではくよくよせず,くじけることのない強い人間が求められてくる」と話されていました。
また,先日,東京日野市にある高幡不動尊金剛寺を訪れた折り,川澄祐勝貫主の著書『しかられる幸せ』(サンマーク出版)を入手し,一気に読み込みました。
内容は,教育に携わる一人として大変感銘を覚えるものでした。
同書には,川澄祐勝貫主が,「学校・家庭や社会でも,『ほめ育て』という言葉に惑わされているけれども,人は叱られながら社会のルールや自分と違った考え方や見方を学び,人生の障害を乗り越える力を蓄えていくものだ」と,師僧の秋山裕雅大僧正からの叱られ続けながら教えを受けたというご自身の体験が記されています。
子どもは叱られながら成長し,社会に適応する力を磨きながら社会人として生きていく。
親に厳しく叱られたり,そのことで親子関係が険悪になっても,親の深い愛情からの叱責であれば,必ず分かり合えるものです。
また,子どもが道を誤りそうになったり,嘘があったりしたときなども,愛情をもって叱ったり,毅然とした態度をもって叱ることが大切であるとしています。
教師にとって未来ある教え子たちには,高校や大学を卒業後にはしっかりした社会人になって欲しいと願っています。
子どもが道に迷ったり失敗を重ねたりしたとき,真剣な眼差しで叱り,子ども自身が自己の間違いに気付き,ルール遵守の大切さや厳しさを気付かせたいと願っています。
そして,何が起こるかわからない未知の社会や人生において,多少のことではくじけない強い人間に成長して欲しいとも願っているのです。(H・H)