教育研究所
No.337 いじめ問題(その2)(2012年10月10日)
数件のいじめを対処療法的に解決しても根本的な解決にはなりません。
児童生徒の「不安定な心」が「悪魔の心」に変化する可能性は残り,いじめが発生する危険が絶えずあるからです。
「不安定な心」を「悪魔の心」に変化させない方策は,2つの視点で実施する必要があります。「心情面の教育」と「理性面の教育」です。
不安定な心になっても人間に対する温かい心情や信頼感を失わなければ,いじめを実行することは思いとどまる可能性があります。
温かい心情は主として幼い頃から家庭で育てられることが多いのですが,学校で育つ機会も多々あります。
育つ契機は温かい学校及び学級生活(温和な人格の先生方や友人との生活)や感動のある道徳教育や学校行事,充実した生徒会・学級活動等です。
学校全体を温和な居心地の良い場所にするために,校長先生がリーダーシップを発揮していじめや非行は許さないという厳しい姿勢と共に,児童生徒に優しい温和な態度で臨むよう教職員全体が共通の姿勢を取るようにします。
各担任は,学級において個々の児童生徒の面倒をよく見て,師弟・友人が相互に信頼の情をもつことができる学級づくりに努めます。
道徳教育では児童生徒が感動できる資料を選択し,温かい心情が育つ授業を実施するよう努力します。
「走れメロス」や「蜘蛛の糸」等は児童生徒が感動しやすい資料ではないでしょうか。
「理性面の教育」は人間が生まれながらに持っている権利(基本的人権)の重要性を理論的に指導する教育です。
人には個々に侵してはならない尊厳があること,人には生存する権利があること,これらの権利は自由・平等・平和等と共にユネスコ憲章や日本国憲法でも保障されていることを指導します。
指導する機会は,社会科や道徳,総合的な学習の時間,ホームルームの時間等が適切であると考えます。
算数(数学)や理科教育を通してもの事を科学的に処理するトレーニングや合理的に考える学習を進めることによって,いじめの馬鹿馬鹿しさや不条理さを感じ取らせることも可能であると思います。
指導の中でいじめによって侵害された児童生徒の例をあげたり,もっと大きい例として太平洋戦争やアウシュビッツ,カンボジアの例を挙げて考えさせることも効果的であると思います。
いじめは,人の心に関わることですから一朝一夕でなくならないと思いますが,短期的な対処療法と長期的な予防措置の組み合わせによってゼロに近い状況に持っていくことが可能であると考えます。(完)(Y・H)