教育研究所
No.336 いじめ問題(その1)(2012年10月04日)
人がひとりで生活する場所では「いじめ」は発生しません。
学校や企業等人が集まる場所及び不特定な社会生活等においては「いじめ」が発生します。
人の心は高い理想的な状態にあると,自らを犠牲にしても他の人を助ける「神様や仏様の心」に近くなります。
一方,何かの原因で悪い状態に落ち入ると,自分を見失い「悪魔の心」に近くなります。
不安定な「悪魔の心」の状態で3~4人が集まりいじめの対象を見つけた場合,いじめが発生します。
客観的には明らかにいじめが成立していても,加害者は「遊びの一環」や「集団の心理」に流されて実行している場合,被害者は悲惨な状況に陥ります。
いじめはなくならないという説があります。
確かに人は集団で社会生活をしなければならないので,いじめは絶えず発生する恐れがあります。
人は理想的な心の状態を長期にわたって保つことが難しく,不安定な心の状態に陥ることがままあるからです。
一方,集団の責任者は,いじめをなくす努力を日常的に継続して行う責任があります。
いじめを発見しゼロに近い状態にもっていく努力をしないと,表に現れにくい被害者を悲惨な状態から長期間救い出せないからです。
学校でいじめを減らす方法は2つあります。
1つは発生したいじめをできるだけ早く発見して,双方の児童生徒が深く傷つく前に適切に止めさせることです。
もう1つは,いじめの発生を事前に防ぐ方策を継続して実施することです。
前者は事中・事後の対処療法に例えられ,後者は事前の予防措置と言えます。
発生したいじめには学級担任1人で対応せず,組織的に対応します。学校では「生活指導委員会」等が対応しますが,中学校では「生活指導委員会」と「学年」との緊密な連携が大切です。
学校や学級では,日ごろから組織的に広くアンテナを張っておき,いじめを早い段階で発見しやすくしておきます。
1つの学級の児童生徒は担任の先生だけで見るのではなく,校長や副校長,生活指導主任,学年主任,学年・専科の先生方の複数の目で見守ります。
そして,全学級の状況を1週間に1度定期的に報告しあい,児童生徒の小さな変化も見逃さないようにします。
保護者や地域の方々にも事情を詳しく話し理解していただき,児童生徒の小さな変化も見逃さずに報告してもらうようにお願いしておきます。
もし,いじめを把握した場合は,ただちに生活指導委員会を開き,生活指導主任を中心にして当該学級の被害児童生徒,加害児童生徒,周辺で見ていた児童生徒等の事情聴取をして,事実関係を詳細に把握します。
その後,被害児童生徒の保護と心のケアを行い,加害児童生徒の指導と保護者への説明と指導を実施します。
必要があれば教育委員会やカウンセラー,児童相談所(警察)の協力を得ることが大切です。
東京都品川区教育委員会は,加害児童の出席停止もありうるという施策を提示しましたが,対応する学校はそれくらいの覚悟で臨むべきだということでしょう。
(続く)(Y・H)