教育研究所
No.332 親は子どもとともに成長(2012年07月25日)
先日,私が勤務していた高校の周年行事の祝賀会に参加した。
その折,教え子でもある懐かしい卒業生が,父親と楽しそうに参加していた。
本校は,単位制,無学年制の定時制高校であり,仕事や家庭の都合で全日制高校へ進学できなかったり,不登校などで高校を中退した若者がいつでも入学できる高等学校である。
その卒業生は,ある私立高校を2年生の途中で退学し,1年後の春,第2学年に編入学してきた。
入学式の後,息子には高校だけは卒業させたいと願っていた父親が,「2度目の入学式であったが,自分のことのように嬉しく,感激もひとしおであった」と,話していたので強く印象に残っていた。
しかし,その卒業生の入学後の状況は,決して順調ではなく,夏休み明けから休みがちになり,「保護者の会」に役員として出席する父親の方が,学校へ来る日が多いというほどの実態であった。
「保護者の会」は,親同士が,ひきこもりや不登校について深刻な話をする会ではなく,皆でワイワイやっているうちにいつの間にか本音で話しているような会である。
子どもたちのことばかりでなく親同士の「相談し合える仲間づくり」の場となっていた。
保護者の会の合言葉は,「子どもを信じろ,親が変わらなければ子どもも変わらない。見守れ!待て!手や口を出すな!」であった。
その卒業生は,父親の見守りと愛情が通じてか,翌年4月から学校へ通える状況になり,卒業を迎えることができた。
最初の私立高校入学以来,延べ6年かけての卒業であった。
「先生方の見守りのお陰で,卒業後息子と一緒に家業の洋服屋をやっています。
親も子どもと一緒に成長するものなのですね。よくわかりました」
と,親子で話してくれたことが,なにより私には教師冥利に思えた。
今,深刻ないじめなど多くの問題を抱えている子どもたちが望んでいるのは,「親や先生に何かしてもらいたい」ということだけではではなく,「自分のやり場のない心情を誰かにわかって欲しい」ということなのだろう。
親が変われば,子が変わる。親や教師が子どもの目線に立つことで,本当の子どもの姿が見えてくる。
祝賀会での親子の姿から感じた私の想いである。(H・H)