教育研究所
No.331野菜は植物のどこを食べているの?(2012年07月06日)
今回は,小・中学校の理科の植物の指導に役立つ教材の1つを紹介いたします。
(1)野菜は植物のどこを食べているの?
私たちは野菜を食べない日はありません。
つまり,毎日植物を食べているのですが,植物のどこを食べているなどと意識したことはないと思います。
また,考えなくともすぐ分かることと思っています。
確かにキャベツや白菜は「葉」を食べていますし,トマトやキュウリは「果実」を食べ,大根や人参は「根」を食べているとすぐ理解できます。
ところが,ネギやカリフラワー,ジャガイモ,アスパラガス等が出てくると,はてなと首をかしげ考え込んでしまいます。
ネギについては上部の緑色の部分は「葉」で下部の白色の部分は「茎」,切り捨てる部分が「根」と解釈するのが一般的かと思いますが,はたしてどうでしょうか。
(2)小・中学校の植物の学習
野菜のどこを食べているかを考えるには,「植物の体のつくり」と「受粉と結実」を思い起こす必要がありそうです。
この内容の学習は現在小学校3~5年と中学校1年で行っています。
植物を育てながら「植物のからだは根・葉・茎」からできていることを学びます。
また,花の仕組みを調べて,実際の花を使った実験により「雄しべ」が作る花粉が「雌しべ」に送られ,「受粉後に雌しべの基(子房)が果実になる」ことを学習します。
地下の根や茎を掘り取る観察や実験を交えて,ていねいに追究する学習を行うと,上の野菜の問題はほぼ解き明かすことができるかと思いますが,少し応用問題が必要かもしれません。
その応用問題として適しているのがこの「野菜は植物のどこを食べているの?」の学習なのです。
(3)植物のここを食べている!
それでは,私たちは植物のどの部分を食べているのでしょうか?
ア.私たちが食べるネギの白色の部分は「茎」ではなく「葉」の部分です。
その根拠は白色の部分の最下に小さな固い「茎」があって,その「茎」から下に根が出ているからです。
もちろん,上部の緑色の部分も「葉」ですが,白色の部分も立派な「葉」であってここを主として食べています。
タマネギの食べるふくらんだ白色の部分も「葉」であり,「茎」や「根」はその下にあります。
ちなみに,ネギやタマネギはユリの仲間ですから,私たちはユリの白色の葉を食べていることになります。
イ.2番目のカリフラワーは,「果実」ではなく「花のつぼみ」を食べています。
カリフラワーを畑で取らないでそのままにしておくと,菜の花に似た黄色の花を咲かせますのでつぼみであったことが分かります。
ブロッコリーも同じく「花のつぼみ」で,両方とも菜の花の仲間(アブラナ科)の植物を食べていることになります。
ウ.3番目のジャガイモは,地下にある「果実」ではなく「茎」を食べています。
ジャガイモを株ごと掘り取ると「根」とは別の所から出るひも状の茎の先端にジャガイモができていることが分かります。
地下にある「茎」の先に養分を蓄えているのです。
ジャガイモを掘り取らないでおくと,黄紫色のナスに似た花を咲かせますので,ナスやトマトと同じナスの仲間であることが分かります。
ちなみに,サツマイモは,「根」がふくらんで養分を蓄えたものです。
掘り取ってみると根と同じ形態をした部分がふくらんでいます。
この他,地下の「茎」を食べている植物には,ハスの地下の茎であるレンコンやサトイモなどがあります。
エ.4番目のアスパラガスは,若い「茎」とそれに付いている「葉」と「枝」を食べています。
アスパラガスをよく見ると,茎の表面に小さい三角形の鱗片状のものが付いていますが,これが幼い「葉」です。
また,先端部に細い鱗片状のものが集って付いていますが,これが「枝」の集まりです。
アスパラガスはユリの仲間ですから,私たちはユリの若い茎や葉を食べていることになります。
他に若い茎を食べるものには,タケノコがあります。
タケノコは地下を走る茎から出た地上の茎にあたります。
その新しい先端部を取り取って食べています。
小・中学校の植物の学習の後に以上の内容を追加すると,児童生徒の植物についての認識が一段と深まることと思います。
一度試してみてください(Y・H)