教育研究所
No.321一枚の年賀状(2012年01月25日)
新年に,懐かしい人たちから年賀状が届くのを楽しみにしている人は多いと思います。
私もその一人ですが教職生活を振り返って見ても,教え子からの年賀状は本当に嬉しく,その絆はながく大切にしたいと思っています。
今年の元旦,15年前の高校で担任をした生徒から,卒業後初めての年賀状が届きました。
彼は,生まれつきの小児麻痺のため下半身が不自由で,毎登下校時は,母親の運転する自家用車で通学していました。
風邪の時以外は,休まずに登校しました。そのひたむきさに敬服し私たち教員は,お母さんにも精勤賞を贈りたいと考えたほどでした。
私にとっては,車椅子で学ぶ生徒を担任するのは初めての経験で戸惑いもありました。
しかし,彼は,多くの教師や級友たちの支えや協力もあり充実した高校生活を送り立派に卒業することができました。
卒業文集には,「先生,クラスの皆さん,三年間,本当にお世話になりました。これから先は,一人で何でもできるように努力していきたいです」と書いていました。
そして,今年の年賀状には,
「明けましておめでとうございます。
先生,お元気ですか。
私は,車椅子の生活は変わりませんが,親からも独立して,一人で部屋を借り,車を運転して仕事に頑張っています。
クラスの友だち4人と時々会っています。
この次の会には,先生とお会いして一杯飲みたいと話し合っています。
是非,出席してください。
両親も先生によろしくと申しています」
と書かれていました。
卒業式の日に,父親が,
「来週から宿泊設備のある教習所に通わせて自動車の免許を取らせたいと思っています。
本人が自立して生活できるようにさせたい」と話していたことを思い出しました。
本人の努力は勿論ですが,今でも彼を支え続ける「両親の愛情と友人たちの心の絆」の大切さを学んだ目がしらが熱くなる感動の年賀状でした。(Y・H)