教育研究所
No.312教え子の成長(2011年06月22日)
新しい特別支援学校学習指導要領では,生徒一人ひとりの障害の状態等に応じて,生徒のもつ能力や可能性を最大限に伸ばすきめ細かな指導が求められている。
ろう学校では,中等部・高等部の6年間に,「手に職をつけること」を通して聴覚に障害のある生徒の社会参加や自立を目指し,また,大学等への進学や各種資格の取得ができるよう学力の定着を大切にして,生徒の個性や持ち味を生かした適切な指導を行っている。
3年前の勤務校の同窓会でのこと。高校で担任した教え子の一人が,教員採用試験に合格して,
「先生,希望通り,ろう学校の教壇に立つことができました」
と,うれしそうに私に報告に来てくれた。
しかし,それから3ヶ月も経たないうちに,
「教えることに自信がなくなりました」
「手話がなかなか覚えられません」
「気力がなく,夜もなかなか眠れません」
と,何度も電話で相談を受けた。
その教え子は,真面目で責任感が強い几帳面な性格だったので,私は「心身の健康を第一に考え,自分のペースで指導にあたることが,生徒たちのためでもあり,自分のためでもある」とアドバイスをした。
しばらく経ったある日,その教え子から,
「先生のお陰で元気になりましたので,ぜひ,授業を見に来てください。
苦手だった手話も夏休み中に勉強しました」
と電話口から,久しぶりに元気な声が聞こえてきた。
学校の公開日に彼の授業を見る機会を得ることができた。
その姿は,電子黒板を活用し,「手話」を交えながらの立派な授業であった。
生徒たちも楽しそうに授業を受けていた。
私は,指導力や実践力に課題をかかえる教員も少なからずいる昨今,教育に対する情熱を持ち,生徒たちから信頼されている教え子の成長した姿に感激した。
若い教師の力に希望と夢を持ち,そして,これからの学校教育を託したいと強く感じた授業であった。(H・H)