教育研究所
No.311種子からの芽(2011年06月08日)
6月に入り,春の開花は盛りを終え,新緑はますます濃くなりよい季節になりました。
ところで,校庭のアサガオやヘチマ,オシロイバナ等は,一斉に子葉(双葉)を出し,もう,本葉が3・4枚着き始めた草花もあるでしょう。
この時期に子どもたちに,是非体験させ学習させておきたいことがあります。
それは,「種子から子葉までの変化」の学習です。
実は,大学生や成人に「種子の発芽から子葉までの変化」を4コマ漫画で描いてくださいとお願いして,ほぼ正確に描いてくださる方は2割弱です。
小学5・6年生では1割強です。
「皆さんが育てた経験があるアサガオやヒマワリ,野菜を思い出して描いてください。」と断っても上記の割合です。
多くの方々は,種子から発芽した芽は,すぐ地上を目指して伸びていき,地上に出たところで2枚の子葉を開くまでを描きます。
土中の変化ですから,見ていないことが多いのでしょう。
問題点はどこにあるのでしょうか。1番目の問題点は,子葉までの発生の過程を絵に描けないことではなく,種子の発芽を生き物として捉えていないことです。
種子を生き物として捉えると,発芽するためには,人や動物と同じで何かエネルギーがいるのではないかと考えます。
もう少し具体的に考えると,食べ物や水などが必要ではないかと思います。
そうすると,種子が動き出すのに最初に必要なものは何かと考えます。
それは,温かさと水ではないかと思い至たります。
温かさは春とともに自然に与えられますので,自分で取り入れなければならないものは,水ということになります。
水を取り入れるためには根が必要であることに気付きます。
そうです,種子が最初に準備する部分は「芽」ではなく「根」ということになります。
温かくなると種子の中の幼い「根」が細胞分裂を始め,種子の外に先端を出して土中から水を吸収します。
その次がまた問題で,種子から幼い芽を出すのではなく,伸長した根を土台にして,種子全体が地上に向けて上昇を始め,ついに地上に出ます。
このエネルギーは,水を吸収した子葉が持っている養分から供給します。
地上に出た段階では子葉は1つの塊ですが,やがて2枚に開きます。
多くの人はこの2枚の子葉の段階を見ていますが,土中で種子から根が出て,根を土台にして茎の成長により種子(子葉)が地上に向かって成長するところは見ていない事が多いのです。
種子(子葉)は地中には残らないのです。
種子が発芽するこの時期に,種子を植えてから1週間たったころ,シャベルで土ごと掘り起こし,土中の種子の変化を子どもたちに見せるとよいでしょう。
種子から先ず根が出ることを確認し,地上に種子が顔を出す段階のものをよく見せます。
最後に,子葉2枚が展開するところを見せ,一連の発生の過程を画用紙やノートに記録させ,しっかりした知識として定着するようにします。
高学年では,イネやトウモロコシなどの単子葉植物についても,同じような観察をさせると,植物の発芽について視野が広がり科学的な能力が高まります。
この学習は,1年間でこの時期がもっとも適していると言えます。(Y・H)