教育研究所
No.309 東日本大震災に際しての日本人の心と行動(2011年04月21日)
このたびの東日本大震災により,お亡くなりになられた皆様のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに,被災した皆様にお見舞いを申し上げます。
そして,一日も早い復旧・復興を願っております。
この大震災は,地震と津波,原発という複合した災害によって未曾有の壊滅的な被害をもたらした。
その直後の混乱・困難の中にあって遅々として進まない復旧がもたらす苦汁の生活の中で,被災者の冷静で秩序正しい,互いを思いやり協力し合う行動に対し全世界の人々が驚いた。
そして,日本人のすばらしさを絶賛し,復旧・復興に向けて励ましと支援のエールを送っている。
どのような状況になろうと,困っている人たちが助け合い,皆で分かち合っていくことは当たり前のことである。
だから,日本人はすごいと,ほめられてもさほど嬉しくはないというより照れてしまうのである(勿論,素直に,喜んでいいのであるが)。
なぜ,世界の人たちは,こんな当たり前のことを,当たり前に行動した日本人(被災者)を絶賛したのだろうか。
多分,災害や社会不安の状況が起こると,一部住民が暴徒化したり,略奪行為に走ったりすることと比較したからではないだろうか。
でも,日本の中に,このようなことが皆無ではないのである。
被災地で,避難した空き家に空き巣が入る,無人のマーケットから盗みをする。
募金と称して市民の善意を私腹化しようとする。
復興に向かって需要が見込まれる物資の買占めに走るなどなど,数え上げたらきりがない。
日常生活で,自己中・ルールを守らない・マナーに欠ける大人や中・高・大学生は,どこにもいる。
しかも少なくない。
したがって,有頂天になってはならない。
ほめられたということは,「もう少し,日常のことを見直してみましょう」というきっかけとしたいものである。
さりげなく,ルール(規則)の遵守,マナー(礼儀作法)の励行,エチケット(相手への心遣い)の心がけを見直し,実行したいものである。
ところで,困難時における冷静な判断,協力的な関わり,秩序ある行動は,どのようにして培われてきたものだろうか。
その第一は,祖父母から親へ,親から子へ,子から孫へと代々伝えられてきたことをあげることができる。
地域の教育力,家庭の教育力の成果を上げることができる。
第二は,学校でも,このことは,道徳の時間の指導や学級活動,行動の記録に関する指導等で,当然のこととして子どもたちに指導し,身に付けさせてきた。学校教育の成果でもあり,今後も学校・教師はもっと自信を持って積極的に進めていいように思う。
第三は,日本の政治や経済が,日本人全体の健康や幸福,富を考えて進めてきたことによる。
まだまだ万全ではないが,国民の健康と幸福と富が,分極化しないように配慮して進めてきたことも大きいと考えられる。
今後も,日本人が世界に目を向け,私たちにできることで世界に貢献し,必要としている人に支援の手を差し伸べ,互恵・共存共栄の心と行動をとっていきたい。
それが,このたびの震災に対する世界からの支援と励ましへのお礼でもある。(H・K)