教育研究所
No.307 早春の草花(2011年03月28日)
3月11日の東北関東大震災でご家族や親戚の方々を亡くされた方々,避難所に避難されご苦労されている方々,遠方で心配されている方々に心からお見舞い申し上げます。
政府や地方自治体の行政機関はじめ公共や民間団体等,国民全体で生活に必要な物質や住宅の提供,職業の紹介,生業の再建,教育の再開,インフラの整備等を進めなければなりなせん。
それにしても,原発の放射能の問題が,一刻も早く終息することを願っています。
未曾有の大震災の対応に必死に取り組んでいる間にも,自然の移ろいは正確に進行し,東京あたりでは3月15日に「マンサク」が開花し,22日には「カンヒザクラ」,23日には「タンポポ」「ハクモクレン」「ジンチョウゲ」が開花しました。
今年は「ソメイヨシノ」が開花しても花見気分にならないことでしょう。
森や林全体の様子を見ると,4月に入っても落葉樹の芽はわずかに膨らんでいる程度で,林の中は奥まで日光が当たっています。
この冬と春の境目の林の奥に日光が差し込む時期をねらって,急いで活動する植物があります。
3月から5月ごろまでに活動するフクジュソウやカタクリ,アズマイチゲなどです。
どの花も高さ10cmに満たない小さな花ですが,可憐な美しさを供えています。
これらの植物は,林の床にまだ他の植物が生えてこないうちに,発芽・生長し開花,結実までして,種子を残して5~6月ごろ地上部だけ枯れて活動を終了します。
これらの「早春の植物」は,他の植物にはない生き方をしていると言えます。
カタクリはユリの仲間の植物で東京近辺では,コナラやクヌギなどの雑木林の北の斜面に群生しますが,開発により生育地は少なくなり,現在は保護されている場所は数か所しか残っていません。
地下に球根(りん茎)をもち,地上に2枚の葉を広げ,薄い紅紫色のかわいい花をつけます。種子から発芽,成長しこの小さな花をつけるまでに,6~7年かかるといわれています。
開花するためには植物体全体に養分を蓄える必要があって,このように長い期間がかかるようです。
カタクリは,はじめかわいい球根をつけると,動物に食べられないように地下20~30cmぐらいもぐります。
そのもぐり方ですが,根で球根を地下に引きずり下ろす方法のようです。
根の中間あたりを折りたたむようにして,球根を少しずつ地下へ引っ張り下ろすのです。生き残るための生物の知恵には感心します。
実は,カタクリは東北地方に多い植物で,やや寒い地方に適応しています。
関東では雑木林の北斜面の寒い場所に生育していますが,東北地方では南も含めた全方位に生育し広い場所に群生しています。
カタクリが,東北地方の気候によく適応していることがわかります。
関東地方では,希少な植物として扱っていますが,東北地方では大量に群生するところから,花と葉を同時に鎌で刈り「おしたし」にして食べるそうです。
大震災にあった東北地方の町や地区が,早春の植物のようにねばり強く復興し開花することを心から願っています。(Y・H)