教育研究所
No.306 夢をもつということ(2011年03月11日)
アジア大会優勝に導いたサッカーの日本代表のコメントが,テレビから流れていた。
彼らが,幼い頃から,サッカーの日本代表になることを夢見て,「並々ならぬ努力とまわりの支援」によって,幼い時の夢を実現しているのがわかる。
「凄いな」と,感動した。
ある時,繁華街で,しばらく前に卒業した生徒の保護者に偶然出会った。
「息子は先生の『夢をもち続けよう』という励ましの言葉を大切に,今もプロ野球選手目指してがんばっています」と,嬉しそうに話された。
あの卒業生のがんばりの顔と練習時の姿が浮かんできた。
そのひた向きさにいつも接していた私は,あの生徒の夢が実現すればどんなにいいかと,祈るような気持ちでいたことを昨日のことのように思い出した。
私は教師として子どもたちに,「夢をもとう」「夢をもち続けよう」とよく語っていた。
そのような一言ひとことが,子どもたちに大事にされていたことを知り胸が熱くなった。
教師冥利につきるとも思った。
さらに思いを馳せると,教師として子どもたちには,もっと丁寧にこの語りかけをしておくべきだったのではと振り返ったりもしている。
ある調査によると,小学校6年生の時の夢の実現は8%,中学校2年生のそれは15%だそうである。
この数字は,一度もった夢が,そのまま実現しないことが多いことを示している。
しかし,可能性は少ないからと言って,夢はもたない方がいいということではない。
私の古い講演記録に次のような内容のものがあった。
この講演は,夢でなく希望として話されていた。
「最初の希望が叶わなくても,その後に何か別の希望に変わって,希望自体が成長していく。
希望の多くは失望に変わることも多いけど,失望した後に本当の希望に出会える」こういうふうに,はっきり子どもたちに言うべきだったと,今は思う。
でも,きっと,最初の夢が叶わなくても,「夢をもち続けよう」という語りかけに対して,自分の夢をとことん追究していって,みんな何かに突き当たり,次の夢にたどり着いているのではないだろうかと,少し楽観的な気持ちになっている。
夢を叶えることは大切であるが,修正し発展させて,追い求めることが大事であると思う。
叶えるための継続的な努力をするには,その時点で夢として思っていることを思い描き,実現するためには何をすればいいか,いろいろアクションを起こしてみることだ。
アクションは人とのつながりから始まる。人に聞いてみて人とのつながりを作ることもできる。
一人の知恵には限界がある。
独りよがりな考えになってしまって,解決のめどが立ちにくい。そのつながりが背中を押し,夢の実現につながっていく。
自分の努力と人のつながりによって,若者達の自己実現が進むことを願っている。(T・K)