教育研究所
No.299 一隅を照らす(2010年11月25日)
先日,東京・渋谷で,片手に地図とメモ用紙を持ちながら歩いている6人の男女の高校生グループに出会った。
グループのリーダーらしき生徒に「どちらから」と聞くと,「秋田県の高校生です。
東京へ修学旅行に来て,これから班別の自主行動でNHKに見学に行くところです」と,はきはきした答えが返ってきた。
「今どきの高校生は,・・・」と言われることも多いが,この高校生たちは,リーダーを中心にして,目的に向かい溌剌と爽やかな行動をしていた。
私は,久しぶりに晴れやかな気持ちになった。
修学旅行といえば,東京の中・高校生の多くは,関西方面を訪れ,班別自主行動の他に全員で比叡山の延暦寺を見学する学校が多い。
延暦寺は,約1200年前に最澄が開いた天台宗の総本山である。
「国の宝は道心ある人で,一隅を照らす人である」とは,最澄の言葉である。「一隅を照らす」とは,「その場に必要な光を自らが発するようになれ」ということだ。
つまり,その場にいなくてはならない人,役立つ人になれということである。
人には,その人しかできない能力があり,その能力を生かして,勉強し,仕事に携わるうちに人間として完成していく。
そのような人は,目立とうとしなくても,自ら輝き,他の人々を照らすことになる。そういう人こそ国の宝であるということである。
中・高校生には,それぞれのよき持ち味を伸ばして,個性を輝かせ「一隅を照らす人になり」,誰からも必要と求められる人になって欲しい。
人は,誰でもいつも輝いていたいと願うけれど,輝き続けるには常に努力をすることが大切であるからだ。
「使っている鍵は光り輝き,使われない鍵はいつの間にか錆びて,扉が開かなくなる」という格言もある。
若者には,努力し行動し人生の扉を開け,これからの世界を切り開いていく担い手になることを強く望みたい。(H.H)